カテゴリ:ピアノ
年に一度、若手奨学生の発表の場として個人的には定着してきた感のある、江副財団コンサート。 今年は第18回となります。 私が駆けつけるようになって6回目くらいかしら。 その間、田村響さんは07年ロンティボーで優勝、北村さんは06年浜松国際や08年シドニー国際やで入賞し、宮田さんは09年のロストロ国際で優勝。 奨学生が世界に大きく羽ばたいております。 聴衆はやや年配の方が多く、若手奨学生の伸び盛りの演奏を毎年楽しみにしている雰囲気が感じられます。 また、ピアノファンの方、Vn、Vcファンの方、様々な方々と場をともにできる場内の熱気もあります。 今年のコンサートも素晴らしい演奏で大盛り上がりでした。 === 国内外で修業研鑽を重ねた奨学生が一年の成果を披露いたします。 フレッシュな演奏をお楽しみください。 ■公演日 2012年10月6日(土) 13:30開演 (13:00開場) ■会 場 紀尾井ホール (1列右ブロック) ■出 演 田村 響(ピアノ/特別出演) 宮田 大(チェロ) 高木竜馬(ピアノ) 北村朋幹(ピアノ) 黒川 侑(ヴァイオリン) 弓 新(ヴァイオリン) ■プログラム(演奏順) 新奨学生紹介 ・・・デジカメに入っていますので後日補正いたします。 黒川 侑(ヴァイオリン) ショーソン: 詩曲 サン=サーンス-イザイ: ワルツ・キャプリス 伴奏:北村朋幹 高木竜馬(ピアノ) ベートーヴェン:ピアノソナタ 第30番 ホ長調 作品109 宮田 大(チェロ) カザルス :鳥の歌 黛 敏郎 :Bunraku文楽 プロコフィエフ :マーチ作品65 ==休憩== 北村朋幹(ピアノ) ショパン:3つのマズルカ 作品56 ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 弓 新(ヴァイオリン) パガニーニ :パイジェッロのアリア(我が心もはやうつろになりて)に よる変奏曲 ラヴェル :ツィガーヌ 伴奏:高木竜馬 田村 響 (ピアノ/特別出演) バッハ :平均律 第一巻 1番 モーツァルト :ピアノソナタ K330 Cdur ショパン:2つのワルツ === とまあ、てんこ盛りでお尻が痛くなる長丁場でもありますが、私の感想は手短に。 このホール、この場所で聴くVnの音が高音も低音もよく鳴るのですが、艶があまり感じられないのはそういう特性でしょうか。 その前提で黒川さん。このコンサートの常連さんです。 相変わらず伸びやかな高音と安定した姿勢で演奏する超絶テクにも貫禄が出てきました。 今年はイザイが関係する曲の選曲でしょうか。ショーソン(献呈先がイザイ)がド迫力。いやー難曲ですね・・・。 Vnは詳しくないので一言ですみません。 ピアノ好きの私としては次のサンサーンス(イザイによるVn編曲版)を始めて聴きましたが、これはピアノの方が煌びやかかつスピード感があっていいですね。 まあイザイ版ということもあってとても難しい編曲に仕上がっていましたが、演奏効果の面でうむむと思いました。 ピアノ版は、チャーミングなメロディーがにくたらしく思えるほど高速で腕を交差しひたすらズカズカと演奏する難曲。 その演奏効果である中音から高音まで同じ音を駆け上りながら弾いていく、特に高音の煌びやかさがVn版ではイマイチに感じられ、スピードの乗りもチャーミングなこの曲にしては乗り切れない感じ。 これは黒川さんの演奏ではなくイザイ版の特性なのだと思います(あれ以上のスピードを人類は弾けないと思います)。 そうそう、黒川さんは高速重度の箇所も姿勢よくバリバリ弾いていましたよ~。詳しくないためこちらも一言ですみませんが・・・。 とまあ、好きなピアノ曲だったため曲に対して辛口すみません(ピアノ版のお勧めはリベッタのヴェルビエ音楽祭でのDVD。色っぽいです^^)。 そして竜馬君。 前回帰国の際にFAZIOLIとヤマハでこの曲を聴くことができました。 あれから国際コンクール2つを経験し、貫禄が十分になってきました。 奨学生として、自ずと結果もついてくることでしょう。 緊張感ある出だしから艶やかな音色、一音一音がとてもクリアで竜馬君の神経が行き届いた音です。 スタインウェイとの相性も抜群に感じました。 音のコントロール、メロディーラインも日本人的感性で楽譜の隅々まで気を遣っています。 やはり上手いなあ、というのが一言コメント。 宮田さん。ロストロで優勝して以降は大人気で後ろからは「大ちゃん♪♪」の声が飛んでました(笑) 先日の堤さんの70歳祝いの際も若手の中でも存在感を出して、これから日本チェロ界を牽引していくことは間違いありません。 カザルスの鳥の歌。しっとりと歌い回し、やや傷の多い古いチェロが奏でる美音が魅力的。 黛さんの曲はラフォルでイケメン韓国人が素晴らしく弾いていたので驚いたことを覚えていますが、宮田さんも素晴らしくこれぞ日本の歌い回しといわんばかりの文楽を場内に響かせてくれました。 プロコのマーチは何もいえません。プロコらしい愛嬌と刺激のある曲ですね。場内大盛り上がりでした。 後半の北村さん。 聴くたびに毎回感じることが音の粘性と細かなミスタッチ。 前半高木さんの前に伴奏を弾きましたが、北村さんの後の高木さんということもあって高木さんのクリアな音が際立ちました。 逆にいうと北村さんの音はなぜかネバネバ感を感じてしまい、すっきりしないのです。 有名なマズルカ。1曲目の出だしは素晴らしく、おぉ北村さん素晴らしい!と思ったものの、2曲目あたりからネバネバの聴き疲れが・・・。 そして細かいミスとスケールやアルペジオで最後の音が明晰ではなく聴いている側としてちょっと集中力が途切れてしまいます。 英雄ポロネーズ。豪腕なタイプではないのでさわやかな王子の英雄といった感で好印象はありました。 が、上記同様の粘性とミスタッチ、そして私には音量が足りない気がして、あまり記憶に残っていないというのも事実です。 弓さん。 去年新人紹介で素晴らしい演奏をしましたので今年の演奏が楽しみでした。 パガニーニ、Vnソロで約15分の超難曲。 体全体を使った弓さんの演奏が、難しそうなことをしている雰囲気を増長します(笑) 思いつく限りのパガニーニのテクニックを注ぎ込んだ超絶テクニック。音が飛びまくったり、高速重度だったり、アルペジオを弾きながら左手でピチカートでメロディー作ったり。 これ、当時の聴衆たちが熱狂するわけです。 前述しましたがホールの特性かVnの艶が感じにくい音だったものの、気が狂わんばかりの長丁場の演奏、そしてクライマックスにダメ押しでオラ(ピチカート)、オラ(重音)、オラ(強音)!! 思わずぽかーんと口を開けてしまいました(笑) 拍手というよりため息が多かったかな・・。 そして高木さんとのツィガーヌ。これまた難曲で有名な必殺ピース。 高木さんが伴奏で、物凄く瑞々しい音色。さらに特筆すべきは伴奏として遠慮するつもりがない。 上から下へのグリッサンドなど宝石を散りばめたような美音ながら轟音、爆音で弓さんに一歩も譲るつもりが感じられない(笑) 弓さん、一層体全体を使って俺だって負けてないぜ、と食らいつく。大爆発のクライマックスにこの日一番の場内大喝采。 してやったりのお二人。相性ばっちりですね♪ そんな後に田村さん。 おっと、バッハで場内を沈静化・・・。美しい音にこれまたやられた。 モーツァルト以降、田村さんに感じていること今日も変わらず。 淡々と弾いてしまうタイプで体格と音の大きさがリンクせず。もっと響かせて!もっと弱音を・・という音の幅が相変わらず無い感じ。 中間音域で運指巧みに弾いてしまうのです。美音、轟音という言葉が無縁かな・・・(バッハは美しかったけど)。 いつもながらといっては失礼ながら今日も冗長に感じてしまいました。 弓さんで大盛り上がりに終わってもよかったかも・・・。 演奏後はホワイエで写真撮影。 そっか、今年は全員男性!来年は華が加わってほしいですね~ いよいよ秋のコンサートシーズンがスタートですが、冒頭でこんな面白いコンサートに出会えるとは幸せです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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