テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:ピアノ
マウリツィオ・ポリーニ -ポリーニ・パースペクティヴ2012- 日時 2012年10月23日 (火) 19:00 開演 サントリーホール 1F1列センター左 出演 ピアノ: マウリツィオ・ポリーニ・・・*ベートーヴェン:ソナタのみ ピアノ: ニコラス・オッジ・・・*マンゾーニ作品のみ ヴィオラ: クリストフ・デジャルダン クラリネット: アラン・ダミアン 打楽器: ダニエル・チャンポリーニ ソプラノ: チョー・ジョー プログラム [ベートーヴェン――マンゾーニ] マンゾーニ: Il Rumore del tempo -ヴィオラ、クラリネット、打楽器、ソプラノとピアノのための [ルツェルン・フェスティバル委嘱作品・日本初演] *** ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」 ピアノ・ソナタ第22番 ヘ長調 op.54 ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」 (アンコール) 無し === 来日前は北京で大絶賛されたポリーニのベートーヴェン。 そしてサントリーホールにFabbriniを2台持ち込んでのコンサート。 いまや毎年恒例のポリーニリサイタルだが今年の模様はいかに。 2010年10月にポリーニが現代曲を語る講演会「現代音楽と若者」に駆けつけたとき、こんなに多くの人が現代曲を熱く話すものなんだと感心したのだが、やはり私には合わない。 私にとって聴きたい音楽とは心の糧になったり肥やしになる音楽で、居眠りしようにも寝かせてくれない音楽はどうかと思う。 もちろん好きな人がいるから一ジャンルとして成り立っているのだろうが私には語れない。 ということで、マンゾーニの感想はパス。女声の歌詞を一行だけ追ったが諦めた。 30分ほどの演奏後、休憩。 Fabbriniを入れ替え、ステージ上ピアノを取り囲む雛壇も高さを変更。うい~んという音が何の音かわからなかったが。雛壇を出す音だった。 ピアノの音色。明晰でスタインウェイの金属音が抑えられ聴きやすい音色ではある。しかしいつものことながらFabbriniと普通のスタインウェイの違いが良くわからない。 2012年春の来日。どうしてもFAZIOLIが弾きたいというダニイル・トリフォノフ(ショパンコンクールで弾いたFAZIOLIそのもの)。 そしてそのFAZIOLIとの対決のために松尾が持ち込んだチャイコンガラ(2012年4月27日サントリー)のスタインウェイの方が良い音に感じたのだがいかがだろう。 ポリーニ。前半は楽屋で拍手を送っている姿が拝見できる。 そんなワルトシュタインは指の動きが悪く1楽章の出足が本調子ではない。 突っかかったり運指が滑らかではないのだが、1楽章半ばから動き始めてきた印象。 音量は例年に比べて大きく感じたが、基本的には中間音量で奇をてらわない。 熱情まで通して極端なバスや消え入るようなピアニッシモは無かった。 というと感想が書きにくい演奏なのだが、70歳にして達した演奏スタイル。 培った年輪、枯れてきた血気が無駄に力まない、余計なことをしないという演奏スタイルに現れベートーヴェンのソナタがしっくりくる。 ワルトシュタインは上述の通りだが、22番はTHEスタンダードの演奏でしっくりしている。 熱情には私の心も入ってしまった。 1楽章出だしこそクリアな入りだったが冒頭アルペジオに続く強烈な和音の塊、そして次々と押し寄せる情感のうねり。 若者ほど熱意を強調しないのは70歳で達した心境からか。前までの曲とは異なり、ポリーニも演奏を意識して作り上げているように思われた。 2楽章は無機的にも有機的にも感じられる変奏のテーマ。職人芸で完璧までに同じ音量を出すピアニストもいるのだが、ほんの微妙に上下に揺らぐ。 その切なさがなんとも胸に染み入るのだ。こんな美しく素朴な音を奏でられるじーさんになりたい。 そして、うなりながら引き続けるポリーニ。 3楽章へはアルペジオでの強烈な和音から吹き荒れる旋律。ポリーニにしては音量が大きい。 プレストでもテンポはそれほど加速することはないのだが力強い和音と細かな運指で説得力が凄い。 圧倒的な熱情で心を鷲掴みにされる演奏ではなく、老境に達した(といっては失礼か)ポリーニの情感豊かな熱情であった。 アンコールが無いことは聴衆一同確信していたのだが、止まない拍手とブラボー。 最後はいつものように場内総立ちで締めくくる素晴らしい一夜であった。 ポリーニ、年々いい感じに思える。 (願わくば現代曲は遠慮いただきつつ・・・) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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