テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:ピアノ
先週11/8(木)の東京公演が大成功に終わり、参加した友人全員が絶賛したオールシューベルト。 呑気に沖縄で泡盛を飲んでいる場合ではなかった。 11/13(火)の東京公演を楽しみにしていたところ、こんなニュースが・・・。 === 来日後に左手中指に蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症し、療養に努めておりましたラドゥ・ルプーは、明日の11月13日(火)19時より、東京オペラシティ コンサートホールにて、予定通り公演を行います。 お客様にはご迷惑、ご心配をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。 なお、指の回復状況により演奏曲目に変更が生じる可能性がございます。 何卒ご了承いただけますよう、宜しくお願い申し上げます。 === どんな症状かわからないが、壊死分解する進展性の化膿性炎症ってことで。 糖尿病(私の場合低血糖)を疑われ入院したときに壊死で足を切断した人に会ったのだが、切断しないと進行してしまうので切断するのだという。 とはいえピアニストにとっては指一本でさえ切断されることは命を絶たれる思いに違いない。 無理しなくても・・・、と思いつつ熱演してくれたルプーには感謝したい。 2010年に体調を崩して急遽帰国したため聴くことができなかったルプー、初体験である。 (この時京都で聴いていた友人は、いつもは赤い顔が青ざめていた、手が震えていたと。あがり症とのことだが京都では極度の緊張ではなかったのか) 日時 2012年11月13日 (火) 19:00 開演 (18:30 開場) 会場 東京オペラシティ コンサートホール 1列センター左 ラドゥ・ルプー ピアノ・リサイタル シューベルト: 即興曲集 D935, op.142 フランク: 前奏曲、コラールとフーガ ドビュッシー: 前奏曲集第2巻 (アンコール) ドビュッシー:前奏曲集第1巻より「雪の上の足あと」 シューベルト:楽興の時 第2番 先日はシューベルトのソナタで感涙したという友人がいる。 本日はそのソナタは演奏せず、シューベルトは前回同様4曲の即興曲であるが、感涙するからには柔らかい優しい音を出すのかと思いきや、意外とニュートラルな演奏で穏やかな音色とでもいおうか。 感涙を誘うためにはちょっと逞しいともいえよう。 当夜は中間音量を多用し、フランクのフーガで聴かせたffを最強音量としつつもそれほど強音を出さず、また極小弱音も出さずの演奏スタイル。 また、川西公演をキャンセルしたのは緊張疲労からきたものかと勘ぐったが、今思うとシューベルトは左手をかばうような演奏をしていたような気がする。 シューベルト、フランクではちょっと間が空き、もたつきと感じた箇所があるのだが、そこでは手をかばっていたかのような。 逆に後半のドビュッシーは一切不安を感じる箇所が無い、万全の演奏だった。 さてシューベルトに戻るが、終始鼻歌交じりの演奏で、歌心のある即興曲。 ただ無邪気なシューベルトの即興ではなく、計算された67歳ルプーの即興曲であり、演奏効果上意図的な演出が見られた。 そんなことを思っていたのも最初の頃だけで、いつの間にか67歳ルプーの意図的な演奏、ルプーの世界にのめりこんでいたのだが。 フランクの前奏曲。どこから出てきたのか白い糸が右中指に絡まって一旦演奏が止まった。 うっ、ソーリーと小声で囁いていたのだが、これが見えていないと「いよいよか~」と思ったことだろう。 前奏曲は明晰な音色にチェンジ。 個人的に気に入ったのはコラール冒頭の美音。今日は意外と穏やか・逞しい音が続いており美音が無いのかと思いきやここで出てきた。 そして発展しやや壮大にふくらみをみせる展開は表現の幅を感じたのだが、ややもたつくと思われたのが指の病気の影響か。 フーガで一層そのもたつきを感じてしまったので終わり方はちょいと・・・の思いが強い。 ドビュッシーはBOOK2のためあまり好きではないのだが、考えられうるルプーの意図したドビュッシーとしては完璧の表現ではなかったか。 ペダルを踏んで冒頭の音からドビュッシー色に変化。 これはピアノを箱として鳴らしていたので、最前列ではなくホールの響きが堪能できるホール中ほどがよかったのかもしれない。 最前列では響きがデッドだったが、これもルプーの意図だろう。 曲群があまり好きではないので全体で表現すると、音量にメリハリが少なくその点での演奏効果がやや乏しい。 指は動くようになっているので、難しい箇所も問題なく表現し、ドビュッシーの明確な和音と取り巻く霞、そして時に盛り上げるボルテージはルプーの世界観で表現尽くせていたと思う。 (うーん、BOOK2はよくわからん・・) アンコールのBOOK1はBOOK2の流れを継ぐ演奏。 最後のシューベルトが67才より若干若返った温かい演奏だった。 初ルプー、次回来日はいつになるかわからないが、ルプーワールドを意識させてくれる公演だった。 残念ながら感涙には至らなかったが、状況が悪い中での精一杯の熱演、そして舞台上の振る舞いには大きな拍手を送らせて頂いた。 そして聴衆総立ちならずも半立ちでお見送り、ブラボーも相次いだ。 (曲も曲なので、やや平凡なリサイタルに終わった感が無くは無い・・) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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