カテゴリ:ピアノ
樫本大進(ヴァイオリン) & コンスタンチン・リフシッツ(ピアノ) オール・ベートーヴェン・プログラム 2013年01月29日(火) 19時開演 サントリーホール 1列センター左 ヴァイオリン・ソナタ第3番 変ホ長調 作品12-3 ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 作品23 --- ヴァイオリン・ソナタ第9番 イ長調 「クロイツェル」 作品47 --- (アンコール) クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ Vn:1674年製のグヮルネリ P:ベヒシュタイン ○レビュー○ ベートーヴェンのソナタといえば私のような素人は5番「春」と9番「クロイツェル」しか知らないわけで。 オールベートーヴェンプログラムになってこの二人のデュオに通うことがなくなってしまったのだが、今年はクロイツェルが聴けるので行くことにした。 ちなみにご一緒したピアニストは4番以外は弾いたことがあるとのことで、ピアノの技巧的に難しい9番はぜひ学生にも聴いてほしいと仰っていた(でも今時の学生はリサイタルに興味が無いようで)。 ちょっと嫌味な書き方ではじまってしまったが、私にとってこのデュオは2008年6月のオペラシティ、ショスタコのソナタでVnの弦ぶち切りするという超絶熱演をぶちかました記憶が未だにあまりにも濃厚であり、ベートーヴェンの初期ソナタをのほほんと聴くことができないのである。 余談だが2008年には当夜同様皇后陛下が御臨席となりクロイツェルを演奏していたのだが、ショスタコに比べて記憶に薄い。 その後、周知のとおり樫本さんはベルリンフィルのコンマスとなり、サントリーでリサイタルを開催できるほどの集客も見込めることとなった。 2009年のコンチェルトを聴いた際には、この若者にはがんばって欲しいと記載していたのだが、私ごときには言われるまでもないと余計なお世話なほど見事に実力を発揮しておられる。 当夜の3番4番、まず印象はリフシッツの磐石な伴奏、そして二人の豪快なせめぎ合い。 リフシッツはペダルを多用せず速いパッセージをノンペダルで弾きまくる。 この粒立ちがあまりに素晴らしくキラ星が飛び交うような演奏効果を導き出す。 樫本さんのVnは中間音域が艶やかで響きまくる音色の楽器。音量も大きくリフシッツの見守りつつも間髪入れずに迫ってくる煽りを楽しそうに受け応えしてくれるのである。 といいつついつかも書いているが個人的にはもっと高音に伸びていく楽器が好きかも。 クレーメルでもそう思っていたのだが、今使っているストラディバリに変えて好みの音になった。 特筆すべきは両曲の2楽章。あまりの「のほほんさ」加減に急激にα派がやってくる。 1列目なのであまり窺い知れないのだが、2列目で頭が傾いていく人が多いことを目の端で確認できた。 自分も危なかったが、ここは思い切って寝てもよかったか。 素晴らしいコンサートで眠くなることがある。これは演奏者と同期できたヒーリング効果だと思っている。 (余談だが、私は小菅優さんと同期しやすいようである) 休憩後、皇后様の御入場。 そしてクロイツェルの演奏は2008年と全く印象が異なる素晴らしい熱演だった。 例えると、二人とも「やってやる」という顔をして入場。 樫本さんのソロから入るVnパート、音がでかく熱い。 これを力演で受けて立つリフシッツ。 俺のピアノは伴奏ではないといわんばかりに豪快な和音をぶち込む。 例え方がよくわからなくなってきたがサッカーに例えると、このくらいのパスは取れるだろ?と近距離からシュートまがいの豪快なダイレクトパスをお互い出しまくりみたいな。 また通常ベヒシュタインというと霞の中に美音が感じられ、時に放つフォルテがうまく決まった場合にのみ霞が晴れる豪快な音を響かせるという印象だったのが、当夜は霞が一切かからず全編クリアで明晰な音を奏でていた。 お互いを信頼しあった上で一歩も譲らない二人の熱い駆け引きを終始堪能することができた。 ブラヴォーの嵐のなかうっとりするアンコール。場内明るくなり終了。 時にソリストより前を歩いてしまうリフシッツが当夜のスタンスを物語っていたか(笑) サイン会も実施され長蛇の列を作ることとなった。 リフシッツと握手してもらったが肉厚のある温かい手。この手が変幻自在な音を奏でるのかと思うと、ついでに抱きしめたくなってしまった。 オールベートーヴェンコンサート。 素晴らしい締めくくりである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年01月30日 14時35分55秒
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