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カテゴリ:ピアノ
2012年浜松国際ピアノコンクールのファイナリスト、第5位入賞
キム・ジュン(Kim Joon)さんの来日公演。 いきなり余談だが、身長は186cm、手の大きさはド~ファ(11度!)まで届く。 2012年3月28日(木) アレクセイ・スルタノフ記念コンサート 紀尾井ホール 2012年3月30日(土) キム・ジュン ピアノリサイタル 浜松・夢ひろホール 2012年3月31日(日) キム・ジュン ホームコンサート 個人宅(東京) ベートーヴェン ピアノソナタ第28番 Op.101 ブラームス パガニーニの主題による変奏曲 第2部 Op.35-2 ラヴェル「鏡」より 道化師の朝の歌 リスト ピアノ・ソナタ ロ短調 (アンコール) シューベルト/リスト 魔王 リスト 巡礼の年よりヴェネツィアとナポリ === 昨年、浜コンのレポートをした時に、キム・ジュンのリスト・ソナタロ短調を聴いた後に手が震えて箸が握れなかったと記載していたと思う。 2011年のリストイヤーに何度となく聴いたロ短調。そのいずれをも凌駕する凄い演奏だった。 こう演奏してほしいと期待する箇所を期待値以下の演奏が多い中で、期待をはるかに上回るボルテージで演奏しきったのだ。あんな凄い演奏は始めてだった。 まさか、こんなに早くキム・ジュンの演奏を再び聴けることになるとは! 招聘に尽力してくれたキム・ジュンピアノリサイタル実行委員の皆様には感謝申し上げたい。 ■2012年3月28日(木)アレクセイ・スルタノフ記念コンサート@紀尾井ホール 毎年恒例となっている記念コンサート。最終回。 スルタノフに感銘を受けた女史が全額出資し開催している素晴らしい企画。 過去には友人の伊賀あゆみさん山口雅敏さん(第一回以降たびたび)、高木竜馬さん(第二回)を始めとした、故アレクセイに霊感を受けたピアニストを中心に開催されてきた。 そのコンサートで、キム・ジュンさんがリスト・ソナタロ短調を演奏する。 ピアノは、何とアレクセイが来日公演をしたときと同じスタインウェイ。 彼は紀尾井ホールや浜松のアクト中ホールがよく似合う。 スケールが大きいので、夢ひろホールや個人宅では力を持て余してしまう。 すなわち、当夜が最高のパフォーマンスに感じた。 超弱音から最強音に至るダイナミックレンジの半端無い広さ、展開部などでの猛烈なたたみかけ、ほとんどミスをしない精度の高さ。 11歳から韓国キム・デジン氏に師事し、29歳でここまで至ったかと韓国音楽教育の素晴らしさを目の当たりにした。 8割方埋まった座席を見回し、笑顔でのお辞儀。実は演奏前に、ホカロンを握るほど緊張して手が冷たくなるのだそうである。 その後の休憩で友人が涙しながら出てきた。とてつもない興奮で涙が止まらないのだという。 キムさんもロビーを歩いていたのだが、聴衆もうわぁ~凄かった~っと興奮顔だった。 韓流マダムが取り囲んでいたのも面白い光景だった。 ■2012年3月30日(土)キム・ジュン ピアノリサイタル@浜松・夢ひろホール こちらは元ヤマハ社員だった方が作られた素晴らしいホール。 毎日コンサートや発表会、練習会などが行われる、浜松音楽文化を支える施設である。 キム・ジュンさんの来日にあたっては、浜コン事務局も積極的にアピールを行い、実行委員会の来日招聘活動をとても喜んだそうである。 コンクールという特性から順位付けせざるを得ないのだが、やはり下位になってしまったピアニストへの何もしてあげられない申し訳ない思いがあるのであろう。 ホールのオーナーも積極的に声掛けし、集客に努めてくれたそうである。 ホールのピアノは1年前に購入した最近のもの。 にしては、音がダイレクトすぎて尖がった感がある。リハーサルを少し聴いたのだがそのことを彼自身も感じていたようで、音がダイレクトである、ピアノの音のコントロールが難しい、ということを話しているのを聞いた。 しかし80席のこのホールで幸せなベートーヴェン。この演奏も美しく聴かせつつスケールの大きい解放感を表現。 ブラームスやラヴェルは浜コンでも弾いたプログラム、相変わらずの安定感と表現力で手に汗握る。 リストはいわずもがな。 そして日本初披露となる魔王。圧巻の魔王! どうしてこういうヘビーな曲を好むのか、立て続けに弾かなくてもいいのでは、と思うのだが、好みなのだろう。 いやいや、それにしてもこんな壮絶な魔王はそうそう聴けるものではない。 残像の残るオクターブが大音量を伴って切迫感を煽る。中間部の美しさにうっとりしていると再びオクターブに煽られる。 心揺さぶられ、背中に汗をかくほど感情を揺さぶられた魔王だった。 ヴェネツィアとナポリはそんな心を解きほどしてくれるような美しいピース。 サイン会も列をなして盛り上がり、皆さん浜コンでキムさんを聴いて、まさかこんなすぐにもう一度聴けるとは思わなかった!!と口々に話していた。 また、情報伝達に疎い?ようで、直前に知ったとか、知らない人が多数いる、などと話しを聞いたのも印象的だった。もったいない。 ■2012年3月31日(日)キム・ジュン ホームコンサート@個人宅(東京) FAZIOLIを備える個人宅でのホームコンサート。 浜コン出場者では、昨年12月に内匠さんの2日に渡るコンサートを開催した場所でもある。 コンサート好きなオーナーが聴いて気に入ったピアニストに直談判し、積極的にPRをしては認知度をあげていくという若手ピアニストにとっては嬉しいスタイル。 また至近距離で素晴らしいピアノが聴けることから、口コミでホームコンサート参加者も増えているとか・・。 約40人の熱気に包まれた中でのキム・ジュン氏の一言。 「近い・・・」 大きなホールで沢山の聴衆を目の前にした緊張感とは異なり、目の前に聴衆がいるという不思議な緊張感。 でも、この3公演の中では一番楽しんでいるように感じた。 ピアノの音も尖ってはおらず、このピアノを弾くのも好きだったようである。 後に「とても疲れた・・・」と語っていたが、アンコール2曲目が「No power・・・」と言って弾けそうになかったのだが、オーナーに諭されて優雅に演奏し終演となった。 ハングル後でのインタビュー。 ・日本にハングル語を沢山話す人がいてびっくりした(主には紀尾井の韓流マダムのこと)。 ・ドイツ留学とアメリカ(カーティス)留学を悩んだが、先生が環境を整えてくれたためドイツにした。 ・キム・デジン先生には11歳から学んだが、尊敬する先生で意見などできる立場ではない。 ・浜コンでスタインウェイを選択したのは、ドイツでスタインウェイを弾く機会が多かったため。 そして大事なところ。エントリーしているエリザベート国際について。 ・キム・デジン先生はやめておけ(早く職につけ)と言っているそうだが、自分は出たい。ただ先生の言葉は絶対なので・・・。 だそうである。 場のみんなで応援するよ!と拍手で閉会となった。 すべてが終わり、着替え終わったあとの彼の顔つきがガラっと変わったのには驚いた。 毎日が相当緊張していたのだと感じた。こんなかわいい笑顔、韓流ではなくても惚れてしまう。 エリザベートへの出場と成功を祈りつつ、再度来日するよう私の思いを伝えた。 素晴らしいピアニスト。こんなピアニストを教師だけにしておくのはもったいない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年04月07日 09時57分45秒
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