村上春樹さんがイスラエル文学賞のスピーチで「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を批判」したそうです。
さすがの村上さんも相当の覚悟でスピーチしたんじゃないですかねぇ。
スピーチの内容も、村上さんらしいメタファーを使った素晴らしい内容で僕は感動しちゃいました。
村上作品のファンだからっていうのもあるだろうけど。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の二つの世界とか連想してしまいます。
以下、AFPBBニュースより抜粋
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現地英字紙エルサレム・ポスト(Jerusalem Post)によると、スピーチに立った村上さんは、ガザ地区に対する攻撃を理由に、日本国内で受賞や式への出席辞退を求める声があったことを紹介。
「イスラエルを訪れることが適当なことかどうか、一方を支持することにならないかと悩んだ」と明かした。
そして考えた結果
「作家は自分の目で見ていないこと、自分の手で触れていないものは信じることができない。だからわたしは自分で見ることを選んだ。何も言わないよりも、ここへ来て話すことを選んだ」
と述べた。
また人間を壊れやすい卵、制度を壁にたとえ、
「固い、高い壁があり、それに1個の卵がぶつかって壊れるとき、どんなに壁が正しくても、どんなに卵が間違っていても、わたしは卵の側に立つ。
なぜならば、わたしたち1人1人は1個の卵であり、ひとつしか存在しない、壊れやすい殻に入った精神だからだ。
わたしたちが立ち向かっているのは高い壁であり、その壁とは制度だ」
と語った。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2572390/3808317
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比喩で「高い壁」と言ってるのは、イスラエルの戦車だったりロケット弾、卵はパレスチナの非武装の民間人のことでしょうね。
イスラエルのことだけでなくパレスチナの強硬派も含めて「壁」、つまりは国家の制度やシステムのことをさしているのでしょう。
おそらくそれだけでなくて、決められたシステム(「壁」)の中で生きていかざるを得ないすべての人々(「卵」)のことをさしているんだろうな。
村上さんはひとつの言葉でたくさんのこと表現(それぞれの人に想像させる)するのがうまいから。小説のなかでも。
ニュース映像もYOUTUBEにアップされてました。
>>>http://www.youtube.com/watch?v=4c7BmEJ9ais
その後、検索してみたら、、、
やっぱりこのスピーチはとても話題になっていて、ブロガーが早速スピーチの全文を翻訳したサイトとかでてました。
>>>http://d.hatena.ne.jp/nakamu1973/20090217/1234789406
「卵と壁」のことについて先のニュースよりもう少し分かりやすく翻訳されていたので紹介します。
~~~ ここから ~~~
「たとえばそこに硬くて高い壁があって、一個の卵がそこにぶつかって行くとしたら、たとえ壁がどんなに正しくても、卵がどんなに間違っていたとしても、僕は卵の側に立ちます」
「なぜか? 僕ら一人ひとりが一個の卵だからです。壊れやすい殻に入った、唯一無二の魂だからです。僕らはみんな高い壁に立ち向かっています。壁とはつまり、個人としてまっとうとは言いがたい行為を僕らに無理強いしようとするシステムのことです」
「(システム)はしばしば一人歩きをはじめ、私たちを殺したり、私たちが他人を冷たく、効率的に、システマティックに殺すように仕向けたりします」
「私たちひとりひとりには、有形の生きた魂があります。システムにはそんなものはありません。システムが私たちを思うままにすることを許してはならないのです。」
「僕が小説を書く目的はひとつしかありません。個人の持つ独自の神性を引き出すことです。独自性を満足させ、システムにからめ取られないようにすることです。だから――僕は、生命の物語を、愛の物語を、人を笑わせ、泣かせる物語を書くのです」
「目に見える限りでは、私たちには希望が無いように思えます。壁はあまりに高く、あまりに強い。もし私たちに勝利への何らかの希望があるとしたら、それは私たちの完全なる独自性から来るものでなければならないでしょう」
「システムが私たちをコントロールしたり、私たちを何者かに作り上げたりすることのないようにしなければなりません。私たちこそが、システムを作ったのですから」
~~~ ここまで ~~~
村上さんはいままでオウム事件関連の本を出したりもしてるけど、こういう問題にはっきり答えてるのって初めて見たな。
僕も大好きな作家だけにこの言葉は「深いい」ですね
いろんなことを考えさせられます。
あと2008年3月30日付けの信濃毎日新聞に村上春樹のインタビューが載ってたそうですね。
これも読み応えがあります。
>>>
http://af-site.sub.jp/blog/etc/080330-murakami-hi.htmlya