テーマ:ミステリはお好き?(1451)
カテゴリ:日本ミステリ
シリーズ5作目です。
私はこのシリーズにいかに愛着を覚え始めているのかがよくわかった作品です。 でも、最初から順番に読んでいなければ、そう思えたかどうかわかりません。 だから、時系列順にシリーズを紹介してくれたみっつ君さんに感謝しています。 読み終えて心震える、という感じがしました。 七月の終わり、いつもの四人組タック、タカチ、ボアン先輩、ウサコにルルちゃん、カノちゃん、ケーコたんが加わった仲間七人は、大学の白井教授宅に招かれます。 いつものように謎を肴に推理合戦を繰り広げていましたが、そこで初めて、みなは教授が最近、長年連れ添った妻と離婚したこと、そして新しい妻の存在を知るのです。 年齢は四十歳前だという、まだ若々しく、妖しい魅力をたたえた女性。彼女を見て、タックは青ざめました。 「あの人は、ぼくの実の母なんだ。」 タックと彼女にどんな過去が…… タイトルの「依存」 人はその弱さから、様々なものに依存してしまいます。 アルコール、買い物、そして男女の関係にさえも。 自分が身勝手なのに、頭に血を登らせて暴れる男がでてきます。 相手の女性が悪いんだ、と一方的に主張して。 とんでもない奴です。 けれども、切に望んでいても自分の思い通りにならないとき、自分の気に染まないことが起こったとき、それを誰かのせいにしてしまいたい、そんな気持ちは誰しも経験することだと思います。 お前が悪いんだ、あいつが悪いんだ、世の中が悪いんだ、と。 それも一種の依存ではないでしょうか。 悪いとは思っていても、依存することによって少しでも楽になるような気がします。 だけど事態は何も変わってはいない、むしろ悪化することの方が多いでしょう。 そこで本当はとめて欲しい。 誰かに止めて欲しい。 どこまでも何かに頼ってしまう人間の弱さが見えてきます。 過去の事件についてああでもない、こうでもないといつもの推理に頭をしぼり、そこに潜んだ悪意さえ掘り起こして、思いをめぐらせていくうち、実は自分の中にもある悪意にも気づかされる、登場人物たちはそんな経験をさせられていきます。 読んでいて重いです。 語り手のウサコさえもそうです。 さらに、過去にウサコが仲間に対して抱いていた思いや、仲間になるまでの意外なエピソードも明かされます。 でも、ウサコだからこそ、この重い事件顛末を、ぎりぎりのところでいつもの優しさを取り戻して語ることが出来たのだと思います。 明かされたタックの過去、タックが背負ってきたものは余りにおぞましく、ショックでした。 前作「スコッチゲーム」で、過去の傷に苦しむタカチをタックが救います。 今回はタカチが、大切なものを守るために、精一杯の強さを見せます。 タックとタカチの関係がこれまでと、はっきり変わる瞬間には感動しました。 前回、タカチが故郷に帰るにあたってタックを連れて行ったことは、やはり必然だったのだと確信しました。 私の好きなボアン先輩に関しては、今回いいとこばかりしか覚えていません。 いわれのない暴力に直面しても、いつもの非抵抗主義で平和的解決に貢献したし、詳しいことを何も聞いていなくても仲間の気持ちがわかってしまうし、とにかく優しいし、頭は切れるし……。 先輩にも幸せになってもらいたいんですけどね。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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