テーマ:ミステリはお好き?(1445)
カテゴリ:海外ミステリ
「スコッチに涙を託して」に続くパトリック・ケンジー、アンジェラ・ジェナーロを主人公としたシリーズの2作目です。
探偵パトリックとアンジーは、息子の命が何者かに狙われているという女性精神科医の依頼をうけます。 最初はアイリッシュ・マフィアとのトラブルが原因と思われましたが、事件は意外にも二十年前にこの街で発生した殺人事件と関連していることがわかってきます。 連続して起こる無惨な殺人事件とその被害者を結ぶ線がつながりかけた時、パトリックとアンジーが命を狙われることになります。 今回はチャンドラー風の酔わせる文体も抑え気味。 過剰な暴力、異常な殺人鬼、と目を覆いたくなるような場面が多いのですが、ストーリーの展開が面白くて、思わずのめりこんでいました。 今回のタイトル「闇よ、我が手を取りたまえ」は、残虐な殺人鬼の手紙の一節です。 なぜその人間が殺人嗜好症になったか、闇の世界にひきこまれたのかを夢に例えて語っているのです。 パトリックは亡くなった父親の暴力に対するトラウマがあり、アンジーは元夫の暴力に悲哀を味わってきました。 そんな彼等はかつて犯人を射殺したことがあります。 アンジーはそのことについて、 「引き金を引いたときに感じたことを感じてなかったふりを、何年もしようとしたわ。でも、無理だった」とパトリックに言います。 「なにを感じたんだ?」と問いかけられ 「神様になった気分だった。自分がえらくなった気がしたのよ、パトリック」と答えます。 このように、ここでは誰の心にも暴力が潜んでいると言っているようです。 そして、一歩間違って底知れぬ闇に落ちてしまった人間、二人はそんな殺人鬼との壮絶な戦いをして、過酷な現実と対面することになります。 悲しく重い内容ですが、会話のはしばしにユーモアがちりばめられた独特の文体は、この作品の雰囲気をしゃれたものにしており、意外なことに静かでほっとする余韻が残ります。 闇よ、我が手を取りたまえ : デニス・レヘイン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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