こけし用語辞典by松田ひろむ【正末昭初】しょうまつしょうしょ
こけし用語辞典by松田ひろむ【正末昭初】しょうまつしょうしょ 「正末昭初」とは、大正末期、昭和初年のこと。まだ木地師(木地挽)が収集家をまったく意識することなく、子供の玩具としてこけしを作った時代である。またその時期に作られたこけしのこと。この時代には「こけし工人」という言葉もなかった。 天江富弥の『こけし這子の話』(昭和3年)に始まって、こけしは子供の世界から大人の世界のものとなった。正末昭初とはその以前の時代である。 「正末昭初」という言葉はこけし界では単に古いだけでなく、素朴、純粋、無垢、原始、美しいという言葉と重なる。 例えば(佐藤菊治について)「中屋・鹿間蔵は正末昭初の菊治の作。胴は細身で、すっきりとした古式の姿が美しい。中屋蔵の表情からは、伝小原直治にも連なる青根の古い格式を偲ぶことができる。」「佐藤菊治は昭和四十年頃、正末昭初の型の復元に勤め、こけし店「たつみ」からその復元作が多く売られたので、戦後作にも見るべきものが残る。」(木人子室)という。 また(鎌田孝志は)「鎌田文市の正末昭初の作に正面から向き合って製作を行うようになり、見ごたえのある作品を継続的に生み出すようになった。」(KokeshiWiki)というように表現される。 逆に「奥瀬さんから(盛秀太郎のこけしを)一本分けてもらい、このこけしが3本目です。(これは)正末昭初の凄みはありませんが・・・」という。(Kokeshi Collect. )つまり正末昭初は盛秀太郎の凄味の時代であった。 すでに失われた古き良き時代の代名詞それが「正末昭初」である。画像はヤフオクで2014年9月19日に1,802,000円で落札された盛秀太郎19.5㎝。 にほんブログ村にほんブログ村<こけし用語辞典by松田ひろむ>本用語辞典は『こけし辞典』(東京堂出版)、<KokeshiWiki>に立項されていない項目。あるいは内容や定義が相当程度異なるもの。内容を相当大きく充実させたものに限定している。必要に応じ順次充実させてゆきたいと考えている。みなさまのご意見、ご叱正をいただければ幸いである。