こてつ、オーケストラを聴く
地元サンルイスオビスポには交響楽団があり、只今そのシーズン中なのですが、つい最近、コンサート当日のドレスリハーサル(本番と同じことをするリハーサル)が無料で一般公開されていることを知りました。しかもお子様大歓迎!こんないい機会を逃す手はない…ということで、本日行ってまいりました。会場はCal Poly(州立大学)のコンサートホール。初めて入ってみましたが、新しくて綺麗なホールでした。無料だっていうのに、案内係のおば様たちがちゃんといて、こてつと私を座席まで案内してくれました。30分遅れていったにも関わらず、(リハーサル中、好きな時に出入りが出来るシステム)前から5番目の列に陣取ることができました。本格的なコンサートホールは初めてのこてつ、周りを見回して、ちょっと圧倒され気味。一人で座るのが不安らしく、私の膝の上に落ち着きました(重いよ)。「お子様歓迎」なんて書いてあったから、子供がそこらを走り回っているのかと思いきや、結構し~んとしているじゃないですか…お子様連れよりも、ちゃんと聴きに来ている年配の観客の方が多いように見えました。ああ、これじゃこてつはあんまり長持ちしないかも…と、ちょっと落胆。さて今日のご演目は。ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲:Prelude to "Die Meistersinger"コリリアーノの『レッド・バイオリン』からかシャコンヌ:Chaconne from The Red Violinそして、ムソルグスキーの『展覧会の絵』:Pictures at an Exhibitionゲスト・バイオリニストに、アン・アキコ・マイヤーズ。 クラッシックの大ファンとは言えない私でも知ってる人だったのでかなり期待して行きました。30分遅れて行ったので、ワーグナーは聞きそびれました。「レッド・バイオリン」は、ところどころかなり劇的なので、打楽器がガシャ~ンと来る度にこてつは耳をふさいで眉をひそめてました。子供にはちょっととっつき難い曲だろな、これは。こてつだけかと思ったら、最前列でも耳をふさいでいる男の子がいました(笑)。バイオリニストのマイヤーズはさすがに素敵。どうしてあんな音が出るのだろう…。サンルイスオビスポの地元音楽家(老若男女ごちゃまぜ)のオーケストラがバックであるせいか、またその差が歴然と出てしまっていて、ちょっとアンバランスなほどでした。「レッド・バイオリン」の後、プログラムにはなかった「ダニーボーイ」を演奏してくれたのですが、これがまた良かった。こてつもこれには、手を耳から外して聞き入っていました。マイヤーズがステージを降りた後にはオーケストラによる『展覧会の絵』。私にとって、なぜか昔から思い入れがあるこの組曲。小学生の頃、中村紘子さんのコンサートで聞いたのもこれ。その直後に見に行った地元のバレエ団が演じたのもこれ。ドイツで英語の話せないおじいちゃんと意気投合するきっかけになったのもこれ。中村紘子さんのコンサートの後、ピアノの楽譜を買ってきて弾いてみようとしたけれど、かろうじてプロムナードの音を拾うだけで精一杯だった…―と、思い出いっぱいの作品なのです。こてつもNHKの「ゆうがたクインテット」でプロムナードの冒頭を聴いたことがあったので、「あ、クインテットの歌だ。」と、身を乗り出して聴いていました。あああ、コンサートホールで音楽を聴くなんて何年ぶりかな。家で、安いCDプレーヤーから流れてくる音楽を聴くのとは訳が違うのです。体全体で聴ける感じ。音楽が肌からもしみ込んでくる感じ。それを、こてつを膝に抱いて一緒に体験できたのです。サンルイスオビスポのオーケストラは、世界をツアーで回っているような有名な交響楽団ではありません。でも、高校生位の女の子と70歳出ているようなおじいちゃんが、肩を並べてバイオリンを弾く姿には、音楽への意気込みが感じられて何とも暖かい気持ちになりました。『展覧会の絵』の最終章、「キエフの大門」が壮大なクライマックスを迎える頃には、不覚にも目頭が熱くなってしまいました。何だかすごく嬉しくて。さらに驚いたことは、こてつが最後までちゃんと聞けたこと。レッドバイオリンから展覧会の絵まで休憩を挟んで1時間半くらいあったはず。それを騒がずぐずらず、私の膝でずっと聞いていました。隣のオジさんが席を立ちながら、「最後までちゃんと聴けて偉い子だねぇ。」と褒めてくれて、誇らしげな顔のこてつ。「楽しかった?また来る?」と聞いたら、「うん、また来る。」と大きく頷いていました。いや~、何だかとっても充実した午後でした。次回のドレスリハーサルは5月だそうな。ブラームスのピアノ協奏曲だって。楽しみだなぁ(すっかり行く気)。