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2010年01月08日
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「アルディアス……アルディーア、アルディ、アル」

冬の日、噴水を眺められる公園のベンチに座って、リフィアは歌うように指を折った。なんとなく音律がいい。

二人の休みが合った貴重な一日だったけれど、彼は早朝に会議が入ってしまい、少し遅れると連絡があった。
ゆっくりしていてもよかったのだが、せっかく天気もよかったので、リフィアは当初の予定通りに家を出て神殿の外苑にきていた。
風もそれほど冷たくはなく、日だまりのベンチはぽかぽかとして心地いい。

(アルディアス、アルディーア、アルディ、アル)
(なんだい、それ。活用?)

心の中でもう一度歌っていたら、聞こえてしまったらしい。目をあげると、アルディアスが銀髪をなびかせてこちらへ走ってくるところだった。

(愛称。どれがいい?)
(どれでも。君の好きなのでいいよ)

リフィアの隣に来ると、彼はまず遅れたことと、軍服のままであることを詫びた。
パーティから二ヶ月以上が経とうとしているが、リフィアはまだ彼の私服を見たことがない。二人の休みが合うのがそもそも月に一度くらいしかない上に、将官であるアルディアスはさまざまな軍務に引っ張り出されることが多かった。

軍人である以上、上の命令には逆らえない。
それはわかっているけれども、リフィアはできれば私服でいてほしいと思っていた。

(ごめん。せっかく会える日だったのに)

わずかに眉根をよせたリフィアを見て、申し訳なさそうにアルディアスは言った。

(ううん、違うの。怒ってるんじゃないのよ。そうじゃなくて)

すまなげな表情の唇に指先で触れ、それを一瞬塞いでからまた彼を見つめる位置に顔を戻して、リフィアは首を横に振ってみせた。見た目程度の話なら、結局軍服だって似合うから困るのだ。そうではなくて。

(軍服は職務遂行中であることを表すでしょう? どうしてもそうなるでしょう。せっかくのあなたのお休みなのに)

たまの休みくらい、軍人でも神職でもない、ただのアルディアスである時間を持ってほしい。
どちらの役割からも解放された時間を、今だけでいいから味わってもらいたい。
そう彼女は思う。

普段は役割に沿った大きな責任を、否応もなく負わされているのだから。
そして一度持ったそれを投げようとはしない人なのだから。

「……ありがとう」

声に出してアルディアスは言った。いままでそう言ってくれた人はいない。皆が当たり前のように、軍人の、あるいは神職のアルディアスを見ていた。
それが普通だと思っていたし、嫌だったわけではない、が。

「すごいね、君は。リフィア……リフィアン」
「リフィアン?」
「古い言葉で生命って意味だよ。あとは……リン?」

微笑みかけてくる瞳にむかい、鈴の音みたいね、とリフィアは笑った。

(ねえアルディ。”…………”?)

不意に彼女が伝えてきた言葉になりきれない言葉に、アルディアスは息を呑んだ。

藍色の瞳を瞠って彼女を見やる。リフィアは自分とアルディアスの内側を探るような目をしながら、もう一度同じ言葉を彼に伝えた。

(急に浮かんだのよ。聞き覚え、ある?)
(あるもなにも……それは私の真名のひとつだよ)

今度はリフィアが驚く番だった。
魂を持つ存在はみな、通常使う名前のほかに、存在そのものを表す真名を持つ。それはある種呪文の言葉でもあり、魂レベルでの契約を交わすなどでなければ、他人には教えないのが普通だ。
アルディアスの領域に勝手に踏み込んでしまったような気がして、リフィアは謝った。

(まあ……ごめんなさい)
(いや、君には教えようと思っていたから)
(でも)
(じゃあお返しだ。”…………”、違う?)
(……当たり)

これでお互いさまだね、とアルディアスは笑った。

(私はあなた相手しかわからないけど。あなたは人の真名まで見えるの?)
(まさか。真名が見えたのはさすがに初めてだよ。普通は見ようとも思わないけどね)

アルディアスはベンチの背によりかかり、ゆったりと脚を組んだ。
静かな公園で、池のオブジェから噴きあがる水が陽を受けてきらきらと光る。
せかされない、やわらかな沈黙が冬日とともに二人を包んだ。

軍服の彼。禊用の神官服の彼。リフィアが会ったことがあるのはそれだけだ。
リフィアはサイキッカーではない。アルディアスの傍にいれば、増幅されて顕在化する能力があるようだが、だからといって誰にでも効果があるものでもなかった。

深い心話も読み取りも、基本、アルディアスに対してだけのものだった。
彼の事のように他の人も同じように読めるのかというと、勘がいい程度にいきなり落ちる。
家族や親族だと、もう一歩踏み込めるかな、という程度だ。
それがツインというものだからなのか、それともなにか他の理由があるのか、リフィアは知らない。

けれども彼女にはひとつ、見えているものがあった。
いや、知っていると言ったほうが正しいのかもしれない、これは。

「あれが真名なのなら。……私、あなたの正体を知ってるんだわ、アルディ」
「正体を?」

「ええ。戦場から帰ってきたあなたを見たとき、凍った光みたいだと思ったわ。あなたの周りだけ冴え冴えと冷たくて、そのくせ燃え立つようで。
その熱さと冷たさを、あなたはいつも抱えているのでしょう?
ばらばらになりそうな両極の中に、いつも立っているのでしょう?」

熱くても凍っていても、負う傷は同じはず。
ただそれがおそらくは隠れているだけなのだ。

「リン……」

「そうよ。私は知っているの。あなたが誰かを。
どんなにばらばらになっても、どんなに傷ついて迷子になっても、アルディ、私があなたを見つけてあげる」

ペリドットの二つの太陽が、明るくアルディアスを照らし出す。
彼の抱える宵闇の暗さにも、微塵もゆらぐことなく。

アルディアスは思わず両腕を伸ばし、隣に座る華奢な体を抱きしめた。

「……リフィアン……」

なにかが収束してゆく。
永遠にばらけてゆきそうだったなにかが、この腕の中の一点に集まり、ひとつにまとまってゆく。

彼がただ彼で在れるように。





























<Lifia - Collect a piece of the wind -> リフィアさん
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最終更新日  2010年01月08日 20時22分16秒
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