始祖鳥は飛べるのか?
始祖鳥は発見以来、さまざまな説が説かれてきた。骨格が恐竜であることから、過去において飛翔は否定され、保温のための羽根という考えが有力だった。鳥の研究が進むと、羽根の構造が飛ぶ鳥と全く同じであることが裏付けられ、ようやく始祖鳥は空を舞うことが許された。しかし、飛翔のための筋肉が弱いことから、飛翔ではなく滑空ということに切り下げられていた。森の木の枝にとまる始祖鳥の想像図は、滑空するためにモモンガと同じく高い木に登ることが必要条件とされてきた。 化石の年代測定や環境調査が進むと、始祖鳥の住居周辺には森がなく、浅瀬であることがはっきりしてきた。さらに足の爪の構造から、枝をつかむことはできないとわかり、森を滑空する始祖鳥の図は誤りであることが鮮明になった。飛翔力の弱い始祖鳥が、浅瀬の海で生活するのに、羽根は何の役に立つかを再検討しなくてはならない。浅瀬の鳥と同じ生活を送っていたことは間違いない事実になる。 始祖鳥は肉食恐竜の流れを受け継いでいる。浜辺の生物は餌として捕獲する。その時に、短時間でも飛翔できれば、獲物を発見しやすく、攻撃しやすい。鷹のような行動を想定するのが適切だろう。大型の肉食恐竜が襲ってきても、飛翔能力があれば逃れることができる。弱い飛翔能力を補ったのは、恐竜の足と考えられている。足で砂を蹴って加速する。そして飛行速度に到達すれば飛び上がる。肉食恐竜から逃れるには、飛翔能力を高めるしかない。始祖鳥が生き残った理由になる。 飛翔能力を高めるには体を軽量化するしかない。多くの恐竜が大型化を選択したのに、始祖鳥が小型の理由になる。いかにして、体を小型化して飛翔能力を高めるかが生き残りの条件になった。完全な飛翔能力を身につければ、現在の鳥と同じで簡単には捕食されない。そして、隕石による大絶滅が白亜紀を終わらせる。大爆発による火災と津波を逃れることのできた鳥は羽根があったおかげで、数年間続いた厳寒の地球を耐えたと考えられている。生き残ったのは冬眠できる爬虫類と巣穴に潜っていた哺乳類と木の幹に隠れていた鳥だけだった。鳥が浜辺や水辺を好きなのは、えさが豊富であり、見通しが利いて安全だからだろう。始祖鳥は子孫を残すことができたのである。