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世界中に名前が轟く日本人空手家がいる。 その名もホワイト・ライオン。 猛獣をよく知ってるアフリカ人がライオンという冠をつけたのだ。 これだけでも並大抵の事ではない。 160センチ程の身の丈だが、道衣に隠された背筋は2つの山のように盛り上がっていた。 多少空手の心得があった私は、大学時代先生のワークショップに参加した。 参加者は白帯レベルの男ばかりだったが、 ワークショップの中で攻撃と防御の解説をするため モデルが必要であり先生は私を指名した。 私はニンマリとした。 何しろ世界のホワイト・ライオンからの直接指導を受けられるのだ。 願ったり叶ったりであった。 先生は我々に基本技を学ばせる為に、 1.攻めが正拳上段突きで攻撃を仕掛け、 2.守りが上揚げ受けでそれを防ぎ、 3.返す刀で守りが逆突きの正拳上段突きを 攻めの顔面に打ち込むというシナリオだった。 『ハイ、君いいよ、思いっきり突きを入れて』 先生は余裕で私の突きを、揚げ受けで巻き込むように捉え、 間髪を入れず先生の唸るような拳が私の顔面に飛んできた。 こぶしが額の前で止まったあと、一拍遅れて風が吹いてきた。 スゲエ。。。。。 『どうかな? 両腕を三角形に見立てたら、二等辺三角形の頂点はここだ。そこに向かって点と点を結ぶ最短距離が直線というルートで拳を打ち込むんだ。分かったかな?』 『さあ、今度は君の番だ』 『まず私が攻撃するから、しっかりと受けて、それから反撃するんだ。いいな』 再び先生の肩から膨張してくるようなスピードに乗った突きが飛んできた。 スピードだけでなく体重のかかった重い突きであったが、 運動力学の方向を斜め方向に反らせて何とか受けきれた。 そして今度は受けた勢いをそのままの弾みとして 私は逆転の攻撃に転化していった。 足の5本の指を馬のひずめのように蹴り上げ前に進んだ。 垂直に飛ぶのではなく、床に平行移動するように飛んだ。 コッツ~~~ン 気が付いたら 私の突きは先生のおでこに寸止めもしないまま当たり、 突きを受け損なった先生の腕は所在無い状態で 宙を舞うように泳いでいた。 どこからか囁くような声が聞えてきた。 『いつも・・・』 『いつもあなたは 私をおいて 先にいってしまうのだから』 ・・・・・・・・・ なんか、そんなふうに言われているようで、とてもせつなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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