もう・・・素晴らしすぎるぞ。「ALWAYS 三丁目の夕日」
『ALWAYS 三丁目の夕日』2005年製作・日本西岸良平原作の映画化で、昭和33年が舞台となっていることで注目されている映画だが、自分にとっては、むしろ山崎貴監督作品というところが、かなり興味をそそられた。『ジュブナイル』『リターナー』と一通り山崎監督の作品を見たが、高品質のVFXはもちろんのことであるが、そこで展開されるハートウォーミングなストーリー・人間ドラマが、彼の作品の特徴であり、魅力の一つである。それだけに、あの「三丁目の夕日」を山崎監督が映画化するというのだから、期待せずにはいられなかった。予告編を見る限り、VFXの技術力は認めるとして、あとはどんな人間ドラマを描いてくれるのか、楽しみであった。で、実際に見たところ・・・もう、いい意味で予想を裏切ってくれた。まさか、これほど笑い、これほど感動させる映画を作るとは・・・山崎貴監督の真骨頂をまざまざと見せつけられたような気がする。山崎氏のVFXは相変わらず凄い。しかも今回は、近未来とはうって変わって、昭和33年という過去の日本が舞台。オープンセットだけではとても表しきれないだろう昭和33年を、VFXの力で蘇らせてしまったのだから凄い。もっとも、かく言う私は、昭和33年など全く知らないのだが、、、にもかかわらず、風景を見るだけで、懐かしさというか、郷愁みたいなものを感じる。今よりも遥かに人情があり、暖かみがあった人たち。昭和の情景を見るだけで、なぜか心がホッとする。昭和をほとんど知らないはずなのに・・・もしかすると、私の前世は、この夕日町の住人の一人だったのかもしれない・・・。そのせいなのか、冒頭でいきなり涙出そうになってしまった・・。その昭和の場面を盛り上げてくれる劇中音楽は佐藤直紀氏。いつも私が見る映画やドラマには、たいていこの人が出てくる。今年だけでも、テレビドラマでは『H2』『海猿』『ウォーターボーイズ』。映画では『ローレライ』と、この『ALWAYS』。アニメでも『交響詩篇エウレカセブン』で、毎回この人の音楽を聞いている。いずれも、一度聞いただけで印象に残る、壮大なスケールのメロディを奏でてくれる。(もっとも、曲調が似通っているところが、ちょっと欠点ではあるが。)冒頭のタイトルバックの音楽は、山崎氏の演出とうまく混ざり合って、いい具合に仕上がっていた。この冒頭だけでも、感動ものであった。出演俳優の演技を見ていくと、それぞれがそれぞれ、しっかりキャラを確立していて、こちらも予想以上の演技をしていた。吉岡秀隆氏は、あんなコミカルな演技もできるんだなあ~。堤真一氏も、いかにも昭和の頑固親父で、ちょっとおっちょこちょいな役を見事に演じきっていた。案外、みんなコミカルな演技は苦手じゃないだろうか・・などと思っていたものだったが、そうでもなかった。それぞれの俳優の意外な一面も見られたように思う。そして、それぞれ登場キャラの描き方自体も、山崎氏はぬかりなく徹底してた。比較的登場シーンの少ない町医者(三浦友和)にも、彼の過去を描くことで、昭和33年という時代に深みを与え、観客に共感を与えている。そして、ツボを押さえた演出や伏線の張り方も見事であった。むしろ、一流と呼んでも差し支えないだろう。笑いあり、感動あり。真のエンターテイメント映画が完全に確立されていた。今年見た映画の中でも、いや、これまで見た映画の中でも、最高に面白い作品であった。もう、山崎監督の手腕には脱帽するしかない。いっそう、山崎貴監督のファンになりそうだ。これで名実ともに山崎貴監督は、国民的人気映画監督の地位を確立したと言ってもおかしくない・・・かな?それにしても、ここ最近、昭和ブームといったものが流行っていると聞く。それこそこの映画のヒットにしてもそうだし、昭和のおもちゃの復刻版や、なつかしアニメのDVD化など、今、世の中が、いわば『オトナ帝国』のように化している感も否めない。それはまた、『オトナ帝国』で、ケンが言っていたように、今の21世紀に対する絶望が、そうさせているかもしれない。この映画の最後のシーンで、トモエ(薬師丸ひろ子)が夕日を見て、「(この夕日が)ずっときれいだといいね。」と語るが、今見ている夕日は、果たしてきれいに写っているのだろうか・・・。それだけに、昭和ブームというのは、裏を返せば、現実逃避ともとれるわけで、非常に切ないものがある。今、現代の世界で、あの頃の感情を取り戻すことはできるのだろうか・・・?何だか複雑な気分である・・・。~作品データ~<解説>西岸良平の人気漫画「三丁目の夕日」を、「リターナー」「ジュブナイル」とVFXを駆使したエンターテイメントムービーを生み出した山崎貴監督が映画化。<あらすじ>東京下町の夕日町三丁目に住む鈴木家に、集団就職のために上京してきた六子(堀北真紀)が住み込むことになる。また鈴木家の向かいにある駄菓子屋の店主(吉岡秀隆)も、見ず知らずの少年の面倒を見ることに……。(Yahoo!ムービーより)<スタッフ>監督:山崎貴(『ジュブナイル』『リターナー』) 原作:西岸良平 脚本:山崎貴、古沢良太 音楽:佐藤直紀(『ローレライ』『海猿』) <キャスト>茶川竜之介:吉岡秀隆(『男はつらいよ』シリーズ、『学校2』『隠し剣鬼の爪』)鈴木則文:堤真一(『フライ,ダディ,フライ』『ローレライ』)鈴木トモエ:薬師丸ひろ子(『セーラー服と機関銃』『Wの悲劇』)石崎ヒロミ:小雪(『ラストサムライ』『スパイゾルゲ』)星野六子:堀北真希(『HINOKIO』『逆境ナイン』)<関連作品> 三丁目の夕日映画化特別編 ~ALWAYS 三丁目の夕日~夕日町のひみつ ジュブナイルよかったら、クリックお願いします→