年金記録訂正、確定2割どまり 社保庁、算定遅れる
朝日 政治 社会保険庁のずさんな管理による受給者の年金記録の間違いが、昨年1~10月に93万6千件見つかり、このうち、正しい年金額を確定できたのが約2割にとどまっていることが13日、分かった。年金額が確定した後、本来の支給額が本人に支払われる。社保庁は作業の迅速化のため、担当職員を現在の280人から500人に増やす方針だが、時期は未定だ。 「ねんきん特別便」などで記録漏れが見つかった場合、社会保険事務所が審査した後、正しい年金額の計算(再裁定)は、社会保険業務センター(東京都)が一括処理する。 社保庁が13日、民主党の会議で明らかにした再裁定の処理状況によると、社保事務所の審査で記録の間違いが確定して社会保険業務センターに送られたのは、昨年1~10月に計93万6千件。一方、再裁定が終わっていないのは73万8千件(昨年10月)。 作業が滞っているのは、漏れが訂正された記録が雪だるま式に増えているためだ。同センターの受付件数は昨年1月は1万9千件だったが、10月は12万5千件に。一方で、センターが1~9月に再裁定できたのは1カ月に1万~2万件台にとどまり、担当職員が大幅に増員された10月にようやく5万件となった。それでも、再裁定を待つ年金記録は、9月から10月にかけて7万4千件増えた。 センターが再裁定を受け付けてから、本人に本来の年金額が支払われるまで、平均約7カ月かかり、1年以上かかる例もある。 社保庁は担当職員を現在の280人から今年1~3月に310人程度に増やす計画で、3月には12万~13万件の処理が可能になると見込む。受付件数も減るため、3月時点の未処理件数は約66万~77万件に抑えられると説明している。舛添厚生労働相は8日の衆院予算委員会で、民主党議員に再裁定に時間がかかりすぎる点を追及されると、「500人体制にもっていく」と述べ、さらに約200人増やす考えを示した。 ただ、実際に人手を確保できるかどうかは不透明だ。社保庁は民主党の会議で、500人体制の実現のため、増員分を各地の社保事務所職員の応援や派遣職員を充てると説明した。しかし、今度は社保事務所が手がける記録訂正の作業が滞ることになりかねない。社保庁側は「お客さまにご迷惑をおかけしないような対応を検討中」と繰り返すばかり。500人体制が整う時期も、「できるだけ早く」と述べるにとどまった。 再裁定は人手に頼る部分が多く、「複雑な作業」(社保庁)とされる。応援組や派遣社員がこれをこなせるのか、懸念も残る。(高橋福子)