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桜舞う穏やかな春の2018年3月29日、オカダマニラを運営するタイガーリゾーツ社の親会社であるユニバーサルエンターテインメント社の株主総会がお台場のグランドニッコー東京台場で行われました。 やってきました、お台場。 会場は、去年までのヒルトン東京お台場の駅を挟んだ向かいにあるグランドニッコーホテル東京です。 そもそも、ヒルトンはホテル日航東京だったわけですが、JALの経営不振で外資に買い叩かれいつのまにかヒルトンの名前を冠してしまいました。そして反対側のグランドニッコー東京お台場はもともとホテル・グランパシフィック・メリディアンとして開業し、ホテル グランパシフィック LE DAIBAになり、最終的にオークラ系列のグランドニッコー東京に変わっています。資本と運営のめまぐるしい入れ替わりがここ数年のホテルを取り巻く経営環境を物語っていますね。 昔を知ってるお年寄りの方にはこの上なく紛らわしく無事会場にたどり着けたのでしょうか。 そんなどーでもよい心配はさておき、総会会場はけっこう株主で埋まっていました。心なしか若い人が株主に増えたのはやはり日本初のカジノリゾートの情報が広まって来たからですかね?このブログもちっとは貢献してるかもしれません。 まず、株主からの質問に先立ちフジモン(富士本社長)から、今回のウィンリゾーツ社との一連の騒動について説明がありました。ちと長いですが要旨は以下の通りです。 ・ ウィンリゾーツ社(ウィン社)はユニバ社保有の株式を強制償還する権利を有していたこと、償還時の割引などの株式買取価格査定には妥当性がなかったことを認めた ・両社ともほぼ同時期に大株主の前会長が不適格者の疑いがあり米国NGCB(Nevada Gaming Control Board)をはじめとした各国のゲーミング当局に不適格者の疑いで捜査対象となり事業の存続に大きな影響を及ぼすカジノライセンスとそれらの事業に関わる金融機関とのコベナンツ条項違反リスクなど大きな問題を抱え経営陣は全てに優先してリスク排除の行動を取ることを余儀なくされていた ※ コベナンツ:財務制限条項:金融機関が融資する際に顧客企業に遵守を求める財務上の制限条項のこと ・カジノライセンスの審査は大変厳しくNGCBでは経営者や5%以上の保有株主が不適格者と認定されればカジノ事業の継続はできなくなる ・岡ちゃんが経営になんらかの方法で参画した場合、それだけで金融機関との契約違反となり、担保となってるタイガーリゾートアジア(TRA社:タイガーリゾーツ社の親会社)の株式の過半数を没収される条項を受け入れることを余儀なくされている ・コベナンツはウィンがユニバ保有株式を償還した理由の原点である ・スティーブ・ウィンは不適格者の疑いがかけられ捜査対象となったため、ウィンリゾーツ社を事業継続の危機から守るために自ら取締役会長職を即座に辞任し経営から外れた ・上記は金融機関の心象がよく事業継続の安心感が高まったと聞いている ・両会長が退任した後で直接事業を行っている役員同士が話し合うことで、お互いの境遇が理解できた ・両社はよき友人、よき理解者として相互で出来うる限りの協力体制を敷くことで合意し、ウィン社からオカダマニラへの人的資源の参加協力を約束した ・ウィン社との訴訟について、ディスカバリー(証拠開示手続)を行ったところ、岡ちゃんはユニバ社への承認も報告もなしに 「ウィン社の定款に役員会で不適格者と疑われることがあれば株式を強制的に償還できる特殊条件を盛り込むことの根拠となる株主間契約にサインしていた」 ことが発覚した ・ゆえに株式返還の勝率は低く、3割引き償還価格の勝率が高いことがわかったため、金額の妥当性を争う訴訟戦略に切り替え、攻撃的なIR戦略を講じた ・和解でユニバ社に全額キャッシュで支払われる26億$はウィン社が和解時に保有するキャッシュのほぼ全額に相当する ・このためウィン社も経営が成り立たないほどの金額(例えば45億$)を要求され敗ければまた訴訟延長を繰り返しさらに膨大な費用を注ぎ込む、まさにどちらかが破綻するまで一か八かの勝負をするしかないギリギリの判断をしてきたものと考えられる ・ユニバ社がウィン株主に復帰した場合、ユニバ社の親会社の株主のひとりである岡ちゃんがNGCBに不適格者の疑いで捜査対象になるためウィン社のライセンスに悪影響が生じる可能性がある ・ユニバ社も複数の金融機関から不適格者に該当するリスクのある者の経営参加は取引停止およびローン契約違反になると厳重注意を受けている ・本状況下で両社の事業価値を維持しつつ和解する唯一の解決策は、ウィン社の能力の限界でもある現在保有するキャッシュのすべてをユニバーサルに支払い、和解が成立した後で新たな事業費用を調達することが現実ギリギリの両社の選択肢であったと思われる ・今回の和解で重くのしかかっていた高金利の借入と高額な米国訴訟費用の経費から解放され、オカダマニラに注力できる ・総じて言うと、両社の抗争は、岡ちゃんの不適格者の疑いにより株式強制償還がされたことに始まり、スティーブの不適格者の疑いをきっかけとして和解が成立し終わった ・ミニマムリスクで会計処理していたウィン社は今回の騒動によりステークホルダーからリスクの見直しを余儀なくされたのだろう ・ユニバ社の得られるキャッシュのレンジ幅は、ウィン社による訴訟継続と徹底的な時間稼ぎにより4年間の金利負担が1,000億円、弁護士費用400億円(年50億円×4年×2社分)とすると、 敗訴の場合、劣後債19億$から費用を差し引き 勝訴の場合、45億$から費用を差し引き しかもキャッシュが入るのは4、5年後となる さらにウィンがその時点では支払い能力があるのかという新たなリスクも加わる ・今回の和解は、費用、リスク、機会損失や二次被害から不確定要素を全く考えない単純な感情的な役満狙いではなく、環境の変化やその間の費用を具体的に考慮しながらポーカーフェイスや圧力を加え綿密な戦略と忍耐で勝ち得たもので、ウィン社の経営陣も我々もまさに限界であった ・悔やまれることがあるとすれば、なぜ岡ちゃんが株式償還の株主間契約をしてしまったのかということ ・月末に振り込まれる26億3千2百万$は、高金利の借り入れや工事推進に使いたいが各金融機関との契約もあり交渉に時間がかかるために目処が立つにはもう少し時間がかかる ・大手主要格付機関のレーティング審査を受け、信用を高めた上で金融機関と再交渉を始めた方が優位に進めることができる ...非常に丁寧な説明で、いろんな疑問が氷解した瞬間だったのではないでしょうか。 満額受け止めるかは傍に置いておいて、よく練られたストーリーと堂々としたわかりやすい説明に個人的にフジモンの株が大きく跳ね上がったと感じました。 続けて、株主質問ですが、 それにしても、今回の株主総会は、 社畜の私は午後から仕事でギリギリまで聞いてたらお昼が食べれませんでしたよ。ガッデム。 みんなこの会社に関心がありすぎて、ホントにたくさんの質問が出ましたね。よい傾向です。オカダマニラに関する特筆すべきものを列記しておきます。 Qタイガーリゾーツ社のIPOはどのように考えているか。裏口上場はあるか。 A確定事項はないが、スピード優先ならフィリピン、規模優先なら香港やシンガポールでの上場もありえるし、最大規模を狙うなら持株会社をアメリカに移動してニューヨーク公開という考え方もある。 その組み合わせもありいろんな研究をしている段階。 Q定款に加えられる変更は具体的に何か。 A具体的に今これをもってこうするということはない。グローバル化を目指していくために制限を取っておいて最も有効な経営判断を会社ができるようにしておきたいと考えている。 QアルゼUSAは持分法適用会社なので今回の和解金は経常利益ではなく特別利益に計上すべきなのではないか。 A監査法人に相談して判断している。 Qオカダマニラのホテルの進捗を教えてほしい。遅れているのではないか。 A約1000室(993室)のうち現状できているのは500室で稼働しているのは330室。稼働率はほぼ100%に近い。全室オープンは来年の秋頃を予定している。 Q10年後20年後のユニバ社は何を目指すか。 A中期で考えて、総合エンターテインメント企業としてメーカー、カジノ企業として、MGMのような資金力で他社を淘汰する戦いではなく、特徴と能力で資金力だけでは追いつかないアジア全てにおいて最高水準を目指さしたカジノにしていきたい。ハイローラーは一番の施設に来るし二番の施設との売り上げの差は倍ではすまない。 また、メーカーとカジノ両方を持っているのは世界で我々だけでありその特徴を活かしていきたい。例えば為替フリーのカジノマシンを開発している。 Qウィン社との訴訟はこれで終わりか。 A基本的に全て終わり。 Q岡ちゃんへの2000億円の機会損失分を請求する予定があるのか。 A契約自体が10年以上前で古い話しであり時効も含め専門家に相談している。 Q5年後のオカダマニラの売り上げ予想は? A答えられないが、カジノは近隣国から売上でありフィリピンカジノ市場のシェアから推定できるものではない。シンガポールのサンズのようにカジノは市場そのものを変えてしまう力を持っている。今言われている指標以上のものを考えなくてはいけない。 Q決算説明資料を用意してほしい。 Aドタバタしていてそれどころではなかったがソレアクラスの月次データを出せるように目指していきたい。 Q未確定案件の土地の売却は進んでいるのか。 A昨年末に基本合意して進めてきたがそれどころではなくなった。和解金が振り込まれてひと段落したら先方に話をしなくてはならないと考えている。 Q株主優待を楽しみにしているのでお願いします。 A ホテルの優待については、工事の遅延により優待に回すほどの客室が確保できていない。なんらかの答えを出すように努力したい。 (質問者は毎年の優待ありがとうと言っただけでしたがフジモンはホテルの株主優待について返答してくれました。おそらく総会対策Q&Aで準備していた内容なのでしょう。) Q今回の和解金の利益計上で昨年設定したストックオプションの行使条件を満たすのか。 A行使条件は人為的に判断するものではなく自動的に決まるものと考えている。 Qブルームバーグ記事で、ユニバ社が吸収合併される可能性があると言っていたが考えを教えてほしい。 Aマスコミの質問の手口の旨さだが、可能性があるかと聞かれればゼロとは言えないと言ったまで。 Q中国光彩集団との提携内容を教えてほしい。 A目先ではメーカーとしてライセンス提携だが、政治的に力のある国営企業と提携するという意味もある。 QオカダマニラをIPOさせる必要があるのか。岡ちゃんが言っていた追加投資2000億円近隣の開発はどうなっているのか。 A資金的にもっと攻めるのかによるが、計画全てを効率的に見直しており、世界と勝負する上ですべての選択肢がいつでもできるようにしておかなくてはならないと考えている。 最後まで質問を打ち切らず懇切丁寧に回答をするフジモンの姿勢がとても好印象でした。 フジモンの説明に感謝する人続出で、中には感激しただとか、フジモンは長身でハンサムで、 スタンレーホー だとか言い出す株主も出るほどでした。 私も思わず、彼ならこの会社を、オカダマニラを任せられるのでは?と思ってしまうほど説得力がありましたよ。 まあそんなにカジノは、世界は、もちろん甘くはないでしょうけどね。 もう一回言わせてください。 フジモン! さて、株主総会はそんな感じでしたが、 私の最大の関心はフィリピンではお尋ね者になってしまった岡ちゃんが来るかなーということでしたが、 うーん、残念。昨年のような阿鼻叫喚のドラマを見てみたかったのに。それと、来なかった岡ちゃんの妻である岡田幸子取締役がどんな気持ちで壇上に座っていたのか、とても気になり総会中彼女をじっと見つめてしまいました。 それにしても。 強制償還を認める株主間契約をしていた岡ちゃん、当然それを知ってて裁判を6年もやってたんでしょう。騙されて、悔しくて、それを原動力として今日まで来たのでしょう、その執念たるや常人では計り知れないですね。一方、カジノは素人同然の岡ちゃんをあの手この手で言いくるめ不利な契約をまことしやかにサインさせたであろうスティーブ・ウィンの狡猾さが対照的です。 明日、26億3万2千$が全額キャッシュで振り込まれれば全て終結します。ホントに長かったですね。富士元社長お疲れ様でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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