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カテゴリ:books, movies
Mitch Albom
『The Five People You Meet In Heaven』 Hyperion NewYork/YOHAN 【つづき】 ルビーはもう一つ雪の上にサークルを描きました。そこは父親の病室でした。「知っているかしら?あなたのお父様の最後を?お母さまが看病している間、お父様はうなされるようにくり返したわ『やらなきゃならん』って。何日かして体は衰弱し、昏睡状態に陥った。医者がお母さまの健康を気づかって家で寝るように命令したわ。その夜ね。亡くなったのは。その夜、お父様は真夜中に意識が戻ると体力を振り絞って窓辺まで這って行ったわ。」 「窓辺まで這って?何だって?」 「そう窓辺まで。最後の力を振り絞ったのね。窓を開けると夜空に向かってお母さまの名前を呼んだわ。声はほとんど出ていなかった。次にあなたの名前、お兄様の名前、ミッキーの名前を呼んだわ。何か伝えたかったのね。あなたたちが窓のすぐ外にいると思ったのかも知れない。もう命の灯が消えそうなのを自分で分かったんだわ。気温は低く、風も強かった。お父様は夜明け前にそのままの格好でなくなったわ。看護婦が見つけた時、その姿に驚いたわ。あまりにも悲劇的だったので、ベッドに戻しそのまま亡くなったことにしたのね。」 「...どうしてそんなことを知っているのです?」 ルビーは溜息を付いて言いました。「その時カーテンの隣にはもう一人入院代も払えない末期患者が寝ていたの。私の夫よ。」 エディはやっとパズルが解けた気がしました。 「お父様とお母さま、それにあなたのことを知るうちに、私は自分の名前が付いた遊園地に絡んだことだって知った。呪われているんじゃないかって思ったわ。作らなければ良かったっていう遊園地。でも私も愛する人を失った。それから私はここに来てから若い頃の思い出のダイナーを作り、そこに遊園地で不幸になった人々全てを招くことにしたの。あなたもその一人なのよ。」 「父は子供の頃から鬼の様でした。大人になってからも。私は父が嫌いだった。」 「エドワード、私の話から学んで。怒りを溜めておくことは毒なのよ。それはあなたを内側から食い尽してしまう。怒りは人を傷つける武器であるけど両刃の剣なのよ。自分もダメになるわ。」 「許すことですよ。エドワード許してあげて。最初にブルーマンに会った時のこと覚えている?子供の様に走って飛行機のマネまでして。心には何の痛みもなかったでしょ?」 そう言えば何もなかったことをエディは思い出しました。 「何故ならそれは誰も怒りと共に生まれて来ないからよ。そして死ぬ時にはその怒りの思いからは自由になるの。もうあなたはここではその怒りを心に溜めておくことはないのよ。エドワード。お父様を許してあげて。」 「父が亡くなった時、私は自分の一部が崩れた様に思いました。だって父のせいで自分の未来は曲げられ、キャリアも生活も遊園地の機械メンテナンスの仕事に縛り付けられたのですから。『もし遊園地がなかったら』違う人生を送れたって思っていました。父のせいで。」 ルビーは老眼鏡をかえると言いました「あなたが遊園地を離れられなかったのはお父様のせいじゃないわ」 「じゃあ?」 「あなたはまだ2人に会わなければならないものね。」 そう言うと辺りは真っ暗になりました。 気が付くとまた雪山の上に戻っていました。あのダイナーの中でした。ルビーは行ってしまいました。「父さん...。」父親は相変わらず聞こえない様にタバコを吸い続けていました。 「父さん、今、全部聞いたよ。」 エディは父親の前の席に座りました。 「俺は父さんが嫌いだったよ。怒っていたよ。父さんのせいで俺の人生全てがダメになったって思ってたんだ。聞いてるかい?暴力は振るうし、自分勝手だし。嫌いだったよ。どうしてだよ?分らなかったよ!」 エディの目からは涙が溢れ出しました。涙は止まりませんでした。 「分らないよ父さんの人生なんて。分る訳ないだろ!知らないよ!でも父さんは父さんなんだよ。俺の父親なんだよ。だからもう良いよ。もう、もう良いよ!全部オーケーだよ。それで良いだろ?!父さん!?聞こえるかよ?!」 「聞こえてるかよ?父さん?」 父親は依然として呆然と前を見ていました。 最後にエディはポツリと言いました。昔の様に。 「これで直ったよ。」 気が付くとルビーがダイナーの向こうに立っていました。ウエイトレス姿の綺麗な若い娘になってニコリと笑いました。そしてまた全てが暗闇の中に包まれたのです。 【つづく】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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