近所の通り道で時折はっとするほど美しい花々に出会う。
①桜の大木
毎年春になると、荻窪のお屋敷の庭に地域一番の大木の桜が花を咲かせた。
そこらじゅうに桜の香り、小鳥たちの鳴き声が聞こえる。
夏にはたくさんの蝉が鳴いた。
たった1本の木なのに凄まじいパワーだった。
②白木蓮
南阿佐ヶ谷の商店街脇の住宅の大きな白木蓮の一本の木。
家の主は白木蓮かと思うほど、それは立派なたくさんの花を咲かせた。
③赤い薔薇
早稲田通りの街路樹カエデの横に寄りそう薔薇の木。
毎年5月になるとカエデに巻き付いた薔薇は、それは真っ赤な美しい花をたくさん上に横にと咲かせた。
噂によると、近所のおばあさんが薔薇の世話をしていたらしいのだが、、。
④桃の木
薔薇の木があった、同じ早稲田通りのはす向かいの街路樹カエデの横にも美しい花を咲かせる1本の桃の木があった。
ピンクや白の花々をぽんぽん咲かせ、目を楽しませてくれた。
小さな女の子が桃の木の下で楽しそうにしていたり、通りを歩く人々が目を細めて微笑んでいたり。
そのような人々の様子を見るのが嬉しく、私をさらに幸せな気持ちにさせてくれた。
しかしある日突然花たちは私の目の前から消えていった。
桜と白木蓮は住宅の建て替えで切られた。
早稲田通りの美しい花々は、、、。なんで突然切られたんだろう?
中野区は、区の決められた街路樹以外の植物は認めない、とか?
ああ、美しいものはなぜこんなに簡単に消えてしまうのだろう。
私の記憶のなかでひとつまたひとつと花が増える。
そのうち脳を埋め尽くして頭から根が生えてくるかも。
すばらしい花々と出会えたことをただただ嬉しく思う。
樹々の精霊に感謝。そして今まで樹々と共に歩み、育ててくれた人にも。
私はまた新しい花々に出会うだろう。
記憶のなかに積み重なる花はパイのように幾重にも重なって色鮮やかです。