宮本亜門問題作・読み替え蝶々夫人 Part 1
神奈川芸術劇場公演 ネオ・オペラ『マダムバタフライX』
2012年11月17日(土)
KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
【構成・演出】宮本亜門
【キャスト】
蝶々夫人:嘉目真木子(ソプラノ)
ピンカートン:与儀 巧(テノール)
スズキ:田村由貴絵(メゾ・ソプラノ)
シャープレス:大沼 徹(バリトン)
ゴロー:吉田伸昭(テノール)
ケイト:鈴木純子(ソプラノ)
***
横浜のマダムバタフライXに行ってきました。
大雨です!
こないだの横浜の大雨の雨男はホン・イルさんらしいが
きょうはだれなんだ??
あの衝撃のアンフォルタス役から2カ月、大沼徹がシャープレスで見参するということでどんなに化けるんか?と期待していたら、あっさりと裏切られた。
大沼さんの役はシャープレスではなく「シャープレスを演じる歌手」の役だったわけです。
つまり大沼徹本人。
だから歌唱部分とのギャップがすごすぎて超(笑)でしたけど、
いやほんまにやっぱりすごくいい声でした!!
すごく重くて豊かなバリトンなのに高い声も美しく出る。
ハイバリトンでもバスバリトンでもない、まさにバリトンでしたわ。
彼が歌い出すと空気が変わる。こんなこといったらなんだけどシャープレスでは彼はもったいなさすぎる。
演技は前半コミカルに徹し、後半でがらっと変えてきた。
平清盛の松山ケンイチかと思ったわ~
怒り、それを押し殺す理性。
蝶々さんに自分の怒りを思わず押し付けてしまったり
ピンカートンに激怒したり
すばらしかった!
ここまでいったらなんだけど宮本亜門が蝶々夫人ときっこうする主役としてシャープレスに演出していたと思う。
そして演出ですがなるべくオリジナル部分の中身にはふれないようにしますが、コンヴィチュニーか、グートかってぐらい読み替えてきた。
いや、読み替えというより、削除と追加なんですけどね。
歌唱を聴かせる部分やコーラスの部分を全部はじき、別の演劇を付け加えているの。
入れ子構造。
それでも後半は私を含め回りの女性がみんな泣いているんだもん。
すごい、この蝶々夫人の泣かせパワー!
歌手は全員素晴らしかったです!
蝶々夫人の嘉目真木子さん、歌も演技もすばらしかったです。それに超美人です!!
ピンカートンの与儀 巧さんもすばらしい声でした!
ゴローの吉田伸昭さんは先日さいたまのオペラガラでドンホセを拝聴しましたけど、きょうはゴローで、とにかく芝居がうまい!
大沼さんが吉田さんを劇中で「座長」と呼んでいました。
そのくらい仕切りまくっていました(笑)。
そして歌唱もさることながらこの歌手の方たち、宮本亜門の細かい演出によくついていったと思います。歌手なわけで、俳優じゃないんだから相当プレッシャーだったと思いますがよくやりました。びっくりですねえ、いまどきの歌手は俳優もこなすんですね!
※前述のようにオリジナル部分の詳細には触れません。概要は述べます。
舞台はクロマキーのセット。
テレビでオペラ番組を放送するのだが、舞台をそのまま中継するのではなく、スタジオで撮影し、クロマキーで歌手と背景を合成させるという新しい試み。そのテストシュートが行われる。
それに参加させられるのが前述の歌手たち。
前面に大きなモニターが下がっていて、そこに合成された映像が映し出される。
舞台は蝶々夫人の新居ではなく、シャープレスの領事館から始まる。こういうとこテレビを意識してますね。
シャープレスのところにきたピンカートンが女性を100円で買ったと得意げに報告する。
シャープレスは眉をひそめる。
ピンカートンのヤンキーヴァガボンドの歌。すばらしい与儀さんの声!
えっとここでいいですか?普通シャープレスはピンカートンより二回りぐらい年上を想定していますよね?それなのにこのシャープレスは若いままで出てくるんです。
かつらもメイクもなし。
大沼徹さんそのままなんです。
でもそれこそが亜門さんの多分狙いなんでしょう。
無理に老け役にすることなくシンプルにそのまま、若い子が見ても違和感がないようにしようと。
この若々しいシャープレスは、理性があるので浮ついたピンカートンの行動には最初から疑問を呈しますが、だからといって力づくでやめさせるわけでもなく、
ピンカートンが初めてお嫁入りしてきた蝶々夫人に会って、あまりの美しさに小躍りする時、やったな~おい、いい娘(こ)じゃないか!と同じ年代の若者のりで喜ぶんです。
ピンカートンはぬけぬけといいます。本当のアメリカの花嫁のために乾杯!
***
花嫁の登場
シャープレス:あなたは長崎出身ですか?
蝶々さん:お金持だったんです。
ピンカートンも領事も芸者の癖に見栄を張ってると思い、笑い出す。
どうして笑うの!?
真剣に怒る蝶々さんの可愛らしさに喜ぶピンカートン
シャープレス:お父様は?
蝶々さん:死んだわ
そっけなく答える。
スズキはそそくさと去る。
聞いてはいけないことを聞いてしまった感漂う。
***カット
それは何?
仏像です。
ゴロー:父親は切腹しました
蝶々さん:私はキリスト教に改宗しました。
いきなりゴローが怒りだす。
(何をやってくれたんだ!)
***カット
蝶々さん:見捨てられたわ… でも幸せです。
ここから第1幕の終わりまで。2人の愛の語らい。すばらしい!
休憩
第2幕
3年がたった。
スズキが仏壇に祈っている。
もうお金がないわ
スズキはもうピンカートンが帰ってこないと確信しているのに、蝶々さんはまだ信じている。
そのスズキを責める
泣きだすスズキ。
ある晴れた日に
ああ…もうダメ。涙が…。
romba il suo saluto.
(礼砲をとどろかせる)というところで太鼓の音がドーンと響く。
なかなか音楽も工夫していたし、凝っていた。
ゴローとシャープレスがやってくる。
私にとってはまさにここからが注目シーン。
マダマ・ピンカートン、プレゴ
シニョールコンソレ、コンソレ
椅子を用意しシャープレスを座らせる
シャープレスはつらい役をピンカートンに押し付けられて緊張している。
言いだそうとすると、蝶々夫人が煙草を勧めるので気勢をそがれる
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最終更新日
2012年11月17日 21時24分52秒
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