加納朋子 私の中のテルヨさん
『てるてるあした』(幻冬舎)親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代の元に、差出人不明のメールが届き、女の子の幽霊が現れる。謎が解ける時、照代を包む温かな真実が明らかになる。好評既刊『ささら さや』の姉妹編。 私は大変な泣き虫です。TVドラマとか本を読んでもすぐに貰い泣きしてしまう、ちょろい女です(笑)そんな私にとって「加納朋子」はもっとも泣かされる作家さんです。『ななつのこ』や『いちばん初めにあった海』などは私のオススメです。今回の本も鼻水が出るほどでした(笑)彼女の本を読んで涙を流すと、その分だけ自分の心の中の澱が流されていくような気がするのです。自分に興味を持ってくれない両親、その二人の贅沢のために荷物一つで知らない遠縁の家まで夜逃げしなくてはならなくなった状況。容姿へのコンプレックス、頑張って合格したのに行けなくなった学校。不平、不満、そして先への不安で一杯の15歳。誰も自分を好きになってくれない。皆優しくない、自分の味方なんていない、でも同情されるなんてもっとイヤ。たった一人で出口のないところに閉じ込められたような毎日で、トゲを出すことでしか自分を守れないと思い込んでる。ああ、私もこんな気持ちになったことがある、と思いました。「ワカッテルヨ、聞イテルヨ、シッテルヨ、ヤッテルヨのテルヨさん」そうそう、私もこんな言葉が口癖だった(笑)そう笑って云えるようになったってことは私の中の「テルヨ」さんは成長したってことでしょうか(笑)はからずも恩田陸さんの『夜のピクニック』とこの本と連続で高校生世代のお話を読みました。恩田さんの作品はどちらかというと帯のように、大人のノスタルジーを書き立てるものだが、この『てるてるあした』は中高生に読んで欲しい本です。そして。子供は大人の言葉を、実は結構理解しているものです。何の気なく発した一言が、いつまでも心の深いところに沈んでいたりする。この本の照代、やす子、そしてあゆかちゃんのように。だから、子供を持つ親になった人にも是非読んで貰いたい。できれば前作の『ささら さや』を読んでからこの本を読んで欲しいです。不思議な町「佐々良」とその住人たち。おっとりなサヤ、大きくなったユウスケ、お夏、珠子、久代のおばあちゃんズとエリカとダイヤ君。彼らのその後、変わったところも変わらないところも読んで欲しい。『ささら さや』(幻冬舎)突然の事故で夫を失ったサヤ。しかし奇妙な事件が起きるたび、死んだはずの夫が他人の姿を借りて助けに来てくれる。ゴーストになった夫と残された妻の切なく愛しい日々を描くミステリ。