カテゴリ:読書日記
倉本由布。ダイヤモンド社。
「それはわがままな恋であったのかもしれない。」 書き出しです。 「いつの御世のことでございましたか、」で始まらない源氏物語、はじめて読んだような気がします。解説とか現代語訳とかではないです。自由に源氏に書かれていない場面が紡がれます。そうして源氏物語の本筋を変えずに寄り添っていく。 少女小説作家らしい、やわらかな言葉で姫君たちのそれぞれの恋について語られます。 「私は、あなたのことがとてもとても好きだなあ」 「葵の上」の章が気に入りました。哀れなわけではない、人品の良い葵を好きになりました。倉本節サクレツ!って感じで、葵上がとんでもなく可憐です。「藤壺」も語りが少女的でよかったなあ。 六条御息所っていますでしょう、高校生のとき、彼女のことが大嫌いでした。中年の国語教師に「大人になれば彼女のことが一番好きになるのよ」って言われていたものだけど、いまだに好きになれません。小説としてみたときに、キャラクターがいかにも類型的ではないですか?頭で考えられた人っていうか。当時は目新しかったのでしょうけれど、現代読むには少し古い造形のように思うので。(古さで古典に文句をつけるのもなんですが。)あんまり彼女の息遣いを感じられないのです。 ……でもなんで彼女は女を呪うんでしょ、私なら不実な光るの君を呪うなあ。 大人になって好きになったのは藤壺です。あんなふうに強かに激しさを隠して、潔く愛されていきたいものだと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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