「お久し振り」に思う
今日は日曜日だが、勤務先の株主総会がある為に出社を余儀なくされた。前職も現職も上場会社だし、総会スタッフに何故か選ばれ続けているので仕方無い。出ないと後で怒られるので、やむなく出社。まぁ、日曜の電車は空いているだけまだマシか、と、座りながらノンビリと会場に向かっていたら、携帯に着信が。電車の中で電話に出る程、厚顔無恥ではないので、誰から掛かって来ているのかだけを確認して放置しようと思ったが…。番号が表示されているだけ。つまり、電話帳登録していない番号からの着信。うーん。誰だろう?目的の駅で下車し、総会会場まで歩きながら、吹き込まれた留守電を聞いてみる。が、30秒くらい何かガサゴソと音がするが、メッセージらしきものは何も無い。これはアレか?事件か?囚われの身で、なんとか危機を知らせようと電話してきたのか?話せる状況では無いから、メッセージが入っていないのか?と、馬鹿な考えをしながら折り返してみる。架空請求かもしれんが、話してみないことには、皆目分からんしね。で、女の人が出ました。「久し振り」と笑いながら言ってます。「突然どうしたの?」とも言ってます。あれ?あなたから掛けてきたんじゃないの?と思い、・着信があって折り返した。・あなたは誰?と聞いたところ…昔馴染みのクラブのお姉さんでした。お姉さんといっても、7歳も歳下だけど。新宿のとあるお店でナンバー1を張り、その後他の大箱のお店へ移籍してナンバー2を張り続けた逸材。私は酒に弱い体質なので、普段から頻繁に通っていた訳では無く、接待用のお店として重宝していただけなので、4~5回くらいしか通っていないのだが、・(そもそも飲む量が少ないので)酔ったにしても、乱れない・絡まない・触らない・(会社の金で飲むことの方が多かったから)支払いは文句無しに良い・覚えやすい容姿とあって、店長さんをはじめとして良くしてもらっていました。そして、このお姉さんとは何故かウマが合い、お店には行かないのに頻繁にやり取りが続いていたりもしました。が、しばらくしてお姉さんはお店を辞めた。狭い世界というか閉鎖環境特有の、妬みから来るいじめなんかも激しかったらしい(なんであの子があんなに稼ぐの?みたいな逆恨みがね…)。まぁ、何処に行ったにしても幸せになって欲しいと、陰ながら思っていました。ものすごく良い人だったから。私は社会人になってから、先輩にムリヤリ連れて行かれて夜の街で飲む様になりました。それまで、水商売というのはテレビ番組でしか見たことはなく、従って、ああいう極端な人ばかりだと思ってました(チマチマ働いてらんねぇよ、みたいな発想をする人達)。だから、骨の髄までしゃぶられない様に警戒してました。しかし、実際にお店に行くと、千差万別。パッパラパーな輩もいれば、真面目にキチンと働いている人もいる。キャストのお姉さんも黒服さんも。恐ろしい程に頭の回転が速く、抜群の記憶力を誇り、他人の考えを手に取る様に分かる。「まさに、これこそが客商売か」と思ったもんです。他人の考えや気持ちが分かるって言うのは、究極の客商売だと思っていました。だって、怒りも悲しみも目には見えない訳だから。そして、そういう思いを口に出したくない人もいるだろうから、それを感じ取れる人は凄いなぁと思ってました。最初、そう考えるのは、私がお人好しなだけだからか?と思い、友達に自分がおかしいのか聞いてみたこともある。友人曰く、「職業だけで選別するのはナンセンスだ。水商売が劣ると言う考えは一般的でよく耳にする事だが、俺にはあの仕事は到底務まらない。酒を飲んで笑っているだけで高給を稼ぐラクな仕事だと言うが、それならばお前がやってみろと思う。きっと、出来ないだろう。嫌な客相手に愛想を振りまくことすら出来ないだろう。俺は俺に出来ないことをやれる人はすごいと思う。」と言われて、なるほどと思った。だから、ウマが合って仲良くなった人は、「水商売だから」と言う理由だけで敬遠するのはやめようと、社会人1年目に固くココロに決めた。このお姉さんは、そういう人でした。もう(年齢的に見ても)水商売からは揚がっているだろうと思い、「今はなにをしているの?」と尋ねると、「母親になった」と。そして、私宛てに掛けた電話は、子供が携帯をいじっていた際に誤って掛けたのだろう、と。なるほどね。だから、ガタゴトと音はするけれども、メッセージが残っていなかった訳か。納得、納得。結婚・出産おめでとうと伝え、またいつか機会があれば再会しようと言われ、会話は終了。で、電話を切った後にふと思った。・仕事用の携帯ではなく、プライベート用の携帯に私の電話番号などが入っていた。・そして、まだ私の電話帳データが消去されていない。・子供が携帯をいじった際に、よりによって私の番号を発呼したという偶然。さすがに、子供が無作為に11桁を押して、それが私の番号だったと言うのは無いと思う。また、折り返しの電話で名乗る前に私と分かっていた点からも、電話帳登録していた私の名前が出ていたからだと思う。まぁ、しばらくの間、お互いに連絡はしていなかった訳だから、たまたま消し忘れただけなのかもしれないけどさ。ただ、人の世は不思議だね。まさか、子供のイタズラという偶然で、電話とは言え再会をするとは思わなかった。今後、実際に目の前で会うことがあるのか無いのかは分からないけれども、またいつの日かお会いしたいもんです。一期一会も良いけどさ、やっぱり仲の良い人や良かった人とは、また会いたいもんね。そして、その際に必要となる連絡先が消されていなかったという事が、物凄く嬉しい。