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カテゴリ:園芸
中日春秋 (書写) 待ち焦がれ咲いた桜の愛おしさ 〈世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〉―。 今年のサクラに平安歌人、在原業平の歌を思う方もいらっしゃるの ではないか▼世の中にサクラなんぞがなければ、いつ咲くのかと待 ち遠しく思うことも散っていく悲しさを感じることもないので春の 人の心はもっとのどかだったろうに。そんな気持ちである▼今年の ソメイヨシノ。全国的に開花が遅れていた。昨年の開花が全国的に 早かったせいもあろうが、なかなか咲いてくれぬ花に業平さんのよ うに少々やきもきもさせられた▼爛漫たる花の下、旅立ちを見送っ てあげたい卒業シーズンには間に合わずじまい。海外からの旅行者 をお見かけするとサクラがまだ咲かぬことになんだか申し訳ないよ うな気分にもなるか▼今年は暖冬だったが、2月下旬から3月上旬 に寒い日が続き、これが開花の遅れにつながったのではないかと聞 く。〈冴え返り冴え返りつゝ春なかば〉は西山泊雲。冴え返るとは 急に寒さがぶり返すこと。厳しき今年の冴え返りにサクラの方も咲 く頃合いを迷ってしまったか▼さて気温も上がり、各地から開花の 報が届き始めた。待たせられた分、より美しく咲いてくれることを 期待しよう。年初からのこの3カ月、震災など暗い出来事が続いた 。せめてその薄紅色が世の中を明るくしてくれたら。やはり〈たえ て桜のなかいせば〉とは思わない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.03.31 06:31:21
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