信仰
信仰【電子書籍】[ 村田沙耶香 ] 表題作をはじめとする数作所収の短編集。 しかしこの作家の頭の中というのはいったいどういうことになっているんですかね。 それ以上にこの作家の文章力の高さが、私に理解を与える。 理解不能ということにならない魅力がこの作家にはある。 だからと言ってその話に私が傾倒するということもない。 でもその変わった視点が面白い。 その信仰であるが、テーマはカルトだ。 この作品では、催眠商法と、カルト宗教の二つを代表的素材として登場させる。 催眠商法には、私が大学一年の時、高校の同級生から誘われてその現場に行ったことがある。 あの時件の同級生がどれだけの損失を被ったかは、聞いていないからわからない。 けれどもきっと大損したろうなというのが私の推測だ。 で、あの時の私は、この小説におけるヒロインそっくりだったと思う。 つまり、全部客観的にみる事が出来判断できたというわけだ。 決して騙されることものめりこむこともなかった。 けれども、その同級生が少し気の毒になり、だまされたふりしてもいいかなどとも思ったが、結局そんな仏心を彼に具体的にかけることはなかったのだった。 その件のヒロインは、愛する妹がカルトにのめりこんだのを見て、何とか騙されたいと考え、親友の主催する天動説を信奉する宗教に入り込む。 10万円で、最終的には450万円の物品を買わされることになる仕組みだったが、彼女は結局、他の信奉者とともに、ジュウマンエンカエセ、と連呼するのだった。(1/9記)