今日、何読んだ？

婚活中毒【電子書籍】[ 秋吉理香子 ]

　ミステリーとして読んだら面白くもなんともないが、婚活という話題の軽小説として読めば、傑作だ。
　ミステリー作家としての彼女は本作集に所収の一品が協会賞短編部門にノミネートされたくらいでさしたる受賞歴はないようだけれども、ことキンドルをみれば数多くの本を刊行しているようだ。
　Kindle Unlimitedにどんどん流してれくれれば、私は次から次へと読み続けるだろう。
　さてそれはともかく本集は、４作の短編からなる。
　表題の通り、婚活が大きなテーマだ。
　ミステリーリーダーとして読めば最初の作品の犯人が結婚相談所の所長であろうことは、全部みろっとめろっとお見通し状態だ。
　２番目の作品の手口は、古典的だ。
　私は、高校時代先輩から、ブスの方から攻めろと言われた。
　本作はつまるところそのブスのための婚活だった。
　３作目のリケジョの話は、傑作だった。
　短編で途中ぶった切り的な終わり方だったけれど、その先の話がみたいなあと思う作品だった。
　４作目は、３５歳の息子を心配して両親が婚活ブースに赴く話。
　そこで男親が相手の母親に淡い恋心をいだき…。
　この作家の文章力はかなり優れている。
　私は、あっという間に本集を読了してしまった。
　作家としては、まだまだ伸びしろがあるんじゃないのかなと私は思った。
　ただ、ミステリーに関してはどうだろうかと思うわけだ。
　根がミステリー作家ならば、まだまだ修行不足、古典的なミステリー３要素+刑事法の習得、警察組織の知悉、物語性の研磨が必要になる。
　そのうえで、文章力がいかがなのかということだ。
　今後秋吉理香子という作家をしばらく見てみようと思う。（12/27記）