駐在巡査
駐在巡査【電子書籍】[ 佐竹 一彦 ] 前読つまり警視庁アウトサイダーがあまりにもひどかったものだから、本作のリアルさが心に沁み、軽快に読了した。 作者はもしかして警察関係者かね。 実在するような駐在所の旦那その奥さん、地域の方々、そして所轄の刑事課員の動きだった。 そして例えば、定型的縊死では決してあり得ないとまで言われている他殺に関し、唯一、地蔵担ぎという技でそれを為す事が出来る、つまり、殺人を自殺に見せる事が出来るなどという話も持ち出し、駐在の猪野が刑事課長に進言するあたりは、何とも凄いぜ。 駐在の奥さんの推理も素晴らしい。 とはいえ、駐在の奥さんが出して見せたトリック解明は、ミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態なんだけどね。 その証拠の出し方が、後出しではなく先出しなのも心地よい。 それで読み手がこの物語に素直に参加できる仕掛けだ。 パリに留学しているはずの画学生がどうやら引きこもりではないのかなどというトリックは見事でしたな。 それは届けられる宅配食から推理したというわけだ。 こういう何気ない推理をきちんとした証拠を提出して読み手に考えさせる手法が素晴らしい。 ただね、駐在さんの遵法精神に?マークがつくのはいかがなものか。 やはり駐在さん、酔っ払い運転やら無免許運転は、いかに村内のこととはいえ、見逃してはだめだ。 自分はきちんと酔っ払い運転をしない自覚があるから、そこは見事だ。 まあそれにしても、猪野駐在がこれほどできるのは、彼が村内をきちんと実態把握しているからだ。 結局、かつての警察活動というのは、地域警察官の実態把握の賜物だったんだよな。 そういうのがどうも今の警察からはなくなっているようだ。 なにしろ個人主義がはびこってしまったのもね。 これからの警察活動が、一体何によるべきものなのかを考えなければならない時代に入ったのだということを本作を読んで逆に感じたのは私だけだろうか。(2/1記)