テーマ:お勧めの本(7264)
カテゴリ:本のこと
今日は祝日だったので、東京西部のS大での講義はお休み。久しぶりにのんびり。 夕方に、友人と池袋に出かけていた妻を迎えに行きつつ、一緒に池袋のジュンク堂書店に出かけました。文学講座に通っている妻が図書を探すのをつきあいながら、前から気になっていた「高学歴ワーキングプア」を買いました。 普段は買った本をだらだら読む私が、この本は一気に読み終えてしまいました。 タイトルから想像されるように、この本は、大学重点化策の名の下に大量生産された博士が、本来想定される大学教員という就職先につけず、フリーターや身分が不安定な非常勤講師で食いつないでいるという姿を描いてます。このこと自体は、ここ数年、マスコミでも取り上げられていることです。 しかし、この本は、筆者本人が、博士号を取得しながら、非常勤講師という不安定な身分にいること、さらに複数の、かつ様々な事情に振り回される「高学歴ワーキングプア」へのインタビューを交え、説得力の高い内容になっています。 それだけでなく、研究の質で勝負すべき大学教員が、年功序列に支配されていること、大学法人がいかに学生を「食い物」にしているかということ--などが生々しく書かれています。大学受験生を持つ親としても、興味深い本です。
ただ、日本経済の予測を生業とする身からすると、大学院重点化策が始まったのが、バブル崩壊が始まった1991年、教員になれず、フリーターとして食いつなぐ大学院生が急増し始めたのが1990年代後半以降、そして、彼らフリーターが日本のデフレ脱却と企業の空前の高収益、いざなぎ超えの景気回復を下支えしてきたこと--に奇妙なつながりを感じざるを得ません。 そして、大学院重点化策が筆者の言う、文科省と東大法学部の謀で始まり、急増する大学院生がフリーターになることが十分予見されていたとすると、彼らは大学の客として大学院生たちを食い物にするだけでなく、将来の日本企業の苦境すらも支えさせようとしていたのではないか--とうがった見方をしたくなります。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 4, 2007 12:08:37 AM
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