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テーマ:DVD映画鑑賞(13627)
カテゴリ:映画
■この世の不幸を一手に引き受けてしまったような中学生初子の物語。文化住宅という名の住処は必ずしも文化的な生き方を提供する場所であるとは限らないわけだ。金もない、父母もいない、電話もない、電気も止まった。でも夢もないのかと言われれば、そんなことはない。それは大好きな彼と大人になったら結婚することだ。
■貧乏、初恋、ひとりぼっち。いい年こいた男の極貧物語だったら、スカンピンでも鼻歌で歌いながら、気軽な気持ちで見続けられるのに、この初子の不幸さ加減は妙にリアルで妙に落ち着かない。死んだお母さん(鈴木砂羽はいったいどれだけ回想シーンで母親を演じるんだろう)が好きだった「赤毛のアン」の物語をこの娘は半分憎みながら大人になっていく。 ■全編ほとんど笑顔を見せない新人東亜優(ひがし・あゆ)の表情がいつまでも心に残る。この映画のあとスピンオフ企画で「16」という続編が制作された模様。ただしそれはこの女性監督の仕事ではない。兄役塩谷瞬は「パッチギ!」の青年と同一人物には見えなかった。少女がわずかな日々で娘に変わるように、この年代の若者もまた日々成長著しいということか。 ■ラーメン屋主人に憑依した鈴木慶一にみとれる。実際には料理なんかできそうもないのに、そういう衣装、そういうたたずまいをさせたらその役柄に見えてしまうのは不思議。そういえば岩井俊二の初期作品には色んな場面で彼が登場していた。4月にNHK教育で放送される宮沢章夫の「ニュータウン入口」も楽しみ。 ■担任教師役は坂井真紀。この反道徳的な女教師の存在が後半いくらか初子の転落を救うところが良い。蒸発した父親役は大杉漣。この人が顔を出すことによって画面がぐっと締まり、その強烈な存在感は大きく物語を動かすことになる。 ■広島訛りは時々良く聞き取れないところがあるが、けっして尾道三部作のようなノスタルジックな青春賛歌ではない。ひょっとしたらこの世で最も不幸せなのはお金のない女子中学生なのではないか,なんていうことを思った。ここで語られる彼と彼女の夢も希望も約束もきっと叶わぬだろうと知りながら、それでも見終わった後、ドヨーンと沈んだ気持ちにならないのは、彼女の無表情の中に生命力みたいなものを感じてしまうからなんだろう。 ■エンドロールでひょっとしたらスカンピンが流れてくるんじゃないかと思ったが、聞こえてきたのはUA。この映画を観て、できた曲ということらしい。「空中庭園」の時ほど強烈ではないか、かなり浸みました。 PS ■本文とは全然関係ないが、ピンクの楳図かずお邸の建設はどうなっているんだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/03/21 12:27:17 AM
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