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カテゴリ:音楽
1. うらみ・ます
2. 泣きたい夜に 3. キツネ狩りの歌 4. 蕎麦屋 5. 船を出すのなら九月 6. 無題 7. エレーン 8. 異国 ■年末のBS熱中夜話特集で印象に残ったテーマは中島みゆき編。第1夜では彼女の名曲群についてのファンの思い入れが語られ、第2夜ではライフワークと言われる舞台「夜会」についての紹介があった。 ■中島みゆきのファンが他のアーティストの信望者と比べてどうこうという話がしたいわけじゃない。自分の好きなものや人について語る時、それがどんな対象であれ、人はある程度同じように過剰に愛を放出するように見える。 ■彼女の歌の特徴のひとつである”わかれうた歌い”とか”怨念”とか”自己憐憫”のようなものを最も色濃く打ち出しているのは80年に出た7枚目のアルバムである「生きていてもいいですか」ではないだろうか。 ■彼女のアルバムにホワイトアルバムが存在するか否かはともあれ、このアルバムはその外観からも、内容からも中島みゆきのブラックアルバムと称され、その認知度は高い。針を落としていきなり始まる「うらみ・ます」のインパクトはある意味、花やしきのお化け屋敷を上回る。M6の途中に女性の悲鳴が聞こえるとかなんとか都市伝説が流れたりしてね。 ■当時中島みゆきがつき合っていた彼氏なるものがもし仮にいたとしたら、その男性に同情を禁じ得ない。公に、しかも全国規模でかつての彼女からあんたのこと死ぬまでうらむと言われて、本望だなどと感じるわけはなく、うらまれるくらいの悪いことをきっとあなたはしたのだという目で周囲からはずっと見続けられている。それこそ死ぬまでそんなレッテルを貼られて生きていくのはとてもつらい。 ■言った者勝ちだなと思う側面もある。変な例えで申し訳ないが、遺書で名指しされた気分に近い。そんな手段が上等であるのかないのかはさておき、やられてしまったという敗北感は一生残る。恨みごとを言うことで優越感を獲得するという方法。それが中島みゆきの戦術でもあった。 ■そんなM1に代表される暗さと共に多彩な比喩とメロディで構成されたA面、そして終始一貫して真っ黒に塗りつぶされたようなB面。後藤次利の仕事の中でもかなり異色な脱ポップなセンスを感じる。文学に例えるなら太宰の「晩年」のようだ。 ■M4はかつての「ミルク32」を想わせるし、終曲M8は例の「世情」の雰囲気にも近い。(「世情」の金八先生は有名だが「異国」は”北の国から”で効果的に使われた)そういう意味ではこのアルバムには「愛していると云ってくれ」の姉妹編のような印象もある。どちらも暗いがどちらも自己演出力に優れ、聴く者をヒリヒリさせるわりには当人はいたって元気そうだ。(きっとあれもこれも嘘泣きだってわかる) ■その2枚に「親愛なる者へ」を加えた3枚は70年代の終わりから80年代にかけて彼女が残した最良のアルバムだと思う。その後、バックのミュージシャンやアレンジがどのように変わっていっても彼女の一番ロックだった時代はこの頃だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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