|
カテゴリ:音楽
01.男は黙って…
02.愛される事減ってきたんじゃない?ない 03.無垢と莫漣、チンケとお洒落 04.ひとりぼっち収穫祭 05.Sir Memoria Phonautograph邸 06.六拍子のワルツ 07.Records 08.危険日中毒 09.バルク丸とリテール号 10.Livingとは Lovingとは 11.Memories 12.Untitled Songs 13.My Ways 記憶のすべて 置いていけるか 来たるべき 怪物に 記録のすべて 白紙にするか 去りゆく 知性 (歩いて、車で、スプートニクで) ■物事を記録するための媒体は著しく進歩した。それに反比例するように人の記憶は時とともに著しく衰える。鈴木慶一が自分自身で制作した前回のソロアルバム「スズキ白書」がリリースされたのは記録によれば今から24年前だが、私がそのCDをどこのショップで手に入れたかという記憶はもはや定かでない。 ■たしかそのCDの1曲目は優しくて骨のない男の話で、嫌だけど似ているところもあるよな、なんて自分のことのように聞いて、そして歌っていた。そして同じ作者の手になる今回の1曲目はそんなイジイジした男とは正反対の潔い骨のあるタイプに変貌している。だってガム吐き出して瞼に貼り黙って明日を待ってるんだぜ。 ■還暦を過ぎたロックミュージシャンがどのような創作を行うのかについては前例がないのでリアルタイムで見聞きしていくしかないのだが、角が取れて円熟味を帯びた作品を作り上げる例が圧倒的に多いと思う。中には往年の自身のレパートリーをキーを下げて焼き直す者もいるだろう。 ■このCD、1曲もキャッチーな曲がない。どれもどの曲も確かに彼らしいメロディーや節回しが散見できるが、それがひとつの楽曲になった時に今まで聞いたことのないような捉えどころのなさがあふれている。どの曲も唐突に終わり、そして始まる。頭と身体がこのアルバムのテンポについていけない。ただしそれも3周目までの話だ。 ■尖ったもの、角があるもの、骨のあるものって最初はなんだかぎこちなくて受け入れがたい。でも一旦好きになってしまえば、それがないと困ってしまうくらいの中毒になる。混成コーラスとの掛け合いで始まるM1から実はクレイジーキャッツが歌ってもフィットするかのような昭和感満載のM2、莫蓮(ばくれん)という言葉を初めて聞いたM3、今ではこの冒頭の3曲の流れがたまらなく好きだ。 ■新潮文庫のmoonriders詩集をそばに置きながら、この作品の歌詞を読み直したのだが、想像力をかきたてる度合いとユーモアのセンスはこの年齢になってますます円熟味を増している。そしてなにより日本語が複雑怪奇なリズムに自然に乗っかる感じが実に巧妙。バラードは比較的簡単にできるが社歌とか労働歌のようなロックを作れる人は希少だ。さすが、日本語ロック論争を現役で通過してきた人である。 ●お薦め3曲 09.バルク丸とリテール号 鈴木さえ子さんの「科学と神秘」に入っていてもおかしくない曲。すっとこどっこいのコーラスが楽しい。 10.Livingとは Lovingとは 一番甘いメロディーが聞ける。ぐっとくる歌詞。でも若い人が同じことを書いてもこんなに余韻は残せないはずだ。 01.男は黙って… スズキ白書の1曲目の彼とは正反対の人物像だが、もしかしたらそいつのなれの果てかもしれない。でも私はどっちも好きだ。 ■年齢的に作品間のブランクはこの先ずっと縮まっていくのではないかと思うし、そうなることを期待している。10年周期のアニバーサリーなんて言っていられない。これから先もまだ聞いたこともないような音楽を聞かせてほしい。諦観とか忘却とか不健康さを刺激的に描かせたらこの人の右に出る者はいない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/12/24 11:54:15 PM
コメント(0) | コメントを書く
[音楽] カテゴリの最新記事
|
|