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カテゴリ:真田丸
■真田昌幸の配役にあたり、当初その候補になっていたのはおそらく役所広司、佐藤浩市、草刈正雄だったのではないかと思う。個人的には役所昌幸を見てみたかった気がするが、こうして見事な臨終シーンまでを見終った今、草刈正雄のチョイスは大正解だったようだ。
■三谷作品の彼といえば古くは古畑第二部の「ゲームの達人」が、最近では舞台「君となら」があり、予想外の起用というわけではなかったが、今回の抜擢は同じNHKでの「真田太平記」との関連が随分と後押しした結果だったように思う。 ■九度山での彼の最期を看取ったのは次男坊をはじめ、彼を慕った多くの人々。ああやって、自分が成し遂げることができなかった徳川攻略のいろはを遺言として息子に伝えるなんてことはドラマでなくてはできないことだが、戦は数ではなく一人ひとりの人間が生きていることだという言葉はこの大河の本質を見事に言い当てている。またしても幻の御屋形様に連れて行かれた最期だったが、秀吉の孤独死とは好対照の暖かい涙だったところも真田側からの描写ゆえのことだろう。 ■一話一日型三谷大河を見慣れた視聴者からすれば、今回はなんと10年間以上を一話内で描くという異色回だった。まるでコントのような征夷大将軍リレーと蟄居免除嘆願を挟み、登場人物たちの経年変化ないし、劣化の描写は容赦なく、有働女史のナレ死で退場するのは藤岡平八郎、新井清正、山西江雪斎など、ここまでの助演男優賞候補たち。それにしても出てくる演者のほとんどがこの賞にノミネートされてしまうほど、贅沢な配役はまだ続く。 ■去りゆく人たちを尻目に新たに登場したのが青年期の豊臣秀頼。弓を引く際の腋毛は体操の内村選手ほどではないが、その精悍な顔立ちと立ち振る舞いは家康をビビらせるには十分すぎる。あれは太閤の血というよりは浅井家側のDNAだな。二代目受難が続く大河の最終兵器が現れ、いよいよ物語は終盤へと向かう。 ■そして女性陣の活躍も目立ったのが今回。春の旦那の気を惹く障子破り作戦はどうかと思う。彼女が目指す八嶋智人的ポジションをこの脚本家がわかっているのか知らないが、ただ可愛い演技派というだけでの松岡茉優の起用ではなさそうだ。またその松岡と黒木華が長澤まさみより垢ぬけていないか問題については、特にコメントはない。また佐助がその長澤まさみを好ましく思っていたことは薄々感じていたが、絵が巧いからといって彼女の似顔絵の横に自分のポートレートはないんじゃないか。何でもかんでも「すっぱですから」って、高倉健じゃあるまいし。 ■見る側としては号泣する準備はいくらでもできていた第38回だったが、見終わった後に必ずしも穴が開いた心の様にならなかったのは、各エピソード(竹とんぼや噛みつき作戦)の暖かさ加減にあったようだ。そしてこれまであえて前に出てこなかった主人公がようやく主役を張る構えを見せ始める予感がやっと滲み出てきたのも今回。受けの演技が巧いのはわかった。さてそろそろあの狸に向かって仕掛けていってもいい頃だと思う。ただ真田幸信繁(ゆきのぶしげ)ではなんか締まらないのは確かだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/09/25 11:23:01 PM
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