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ロドリゲスとらのこども・超克編

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2010.12.14
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カテゴリ:カテゴリ未分類
【時事通信コメントライナー9日付拙稿】再掲
★★花岡信昭メールマガジン866号【2010・12・11】★★
http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/entry/1973794/

*「一に雇用……」はどこへ行った?

大学の仕事にかかわっていると、なんといっても関心の中心は学生の就
職だ。来春卒業予定者の内定が6割に達しないというのだから、これは
「政治の無策」といって過言ではない。

まして、いまの菅首相は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と大見えを
切ったではないか。実はこれが、でたらめもいいところだということが
ようやく一般にも周知徹底してきたようだ。支持率急落の一因はそこに
もあるのではないか。

やや乱暴な言い方になるが、「一に雇用・・・」と言い切ったからには、
雇用対策を真っ先に掲げてもらわないと困る。例を挙げれば、「子ども
手当」は雇用に直結しない。まず、この全廃に踏み切ることだ。

その分を中小企業対策に充てる。これだけでも雰囲気はだいぶ変わって
くる。

事業仕分けなどというパフォーマンスだけの「いじめ型政治」はやめる
ことだ。あれによって生み出される財政効果がいかに微々たるものであ
るか、国民はいやというほど知らされた。

だいたいが、裁判員制度もそうだが、素人が重要な判断をまかされると
いう「参加」が民主主義だというのは虚妄である。プロにしかできない
ことはあるのだ。

民主党は勘違いの「政治主導」と、このサディスティックな事業仕分け
の手法によって、その体質に基本的な疑念が突き付けられることになっ
た。

事業仕分けといいながら、一方で主張していた「地域主権」はどうなっ
たのか。事業を仕分けするのなら、国は国家でなくてはできないことを
やる、それ以外はすべて地方に権限もカネも移すといったダイナミック
なことをやらなければ、ほとんど意味はない。

*社民党との連立は「悪魔の選択」

以下、頭の体操の意味合いも込めて、ざっくりと論を進めていくことに
する。

菅政権は衆院で3分の2をなんとか制するため、社民党との連立復帰に向
かっているようだ。これも雇用対策からいうと完全に逆行している。

社民党との連立を復活させると、普天間の移設は完全に宙に浮く。これ
にからむ公共事業がすべてなくなる。普天間を棚上げにしたら、沖縄に
過度の資金支援をする必要もなくなるから、沖縄経済は冷え込んだまま
だ。

もうひとつ、武器輸出3原則の緩和も頓挫する。軍需産業というのは最先
端技術を必要とし、アメリカを見ても分かるように、産軍複合体の経済
効果は極めて大きい。武器輸出3原則の緩和に期待していた業界は、社民
党の連立復帰で一気に萎縮する。

菅政権はその危険なゾーンに入り込もうとしている。政治的な選択とし
ては、衆院で何としても3分の2を確保するという方向はあり得るのだが、
その一方で大変な代償を払わなくてはならない。社民党はその意味で菅
政権にとって福の神ではなく貧乏神だということを認識する必要がある。

ではどうするか。このコラムではかねてから主張してきたが、民主党と
自民党を中心とした「大連立」しか、日本経済立て直し、もっといえば
「日本再生」の方策はない。

なぜ、日本はここまで落ち込んでしまったか。GDPは中国に追い抜かれ、
政治的にも国際的地位は下がる一方だ。かつての経済大国の面影はなく、
政治面でも経済面でも「三流国」に成り下がろうとしている。

*自民党との「大連立」しか選択肢はありえない

何といっても、国民の中にある将来への「漠たる不安」を解消する必要
がある。それが現段階での政治の最大の使命であるはずだ。

学生に聞いてみると、年金制度をまったく信用していない。「われわれ
が年金をもらうころには完全に破綻しているのでしょうね」などと平気
で言う。「就職したらせっせとため込んで老後に備えなくては」という
のが、意識の高い学生の通り相場だ。

自己責任原則からいえば結構なことでもあるが、国家の年金制度への信
頼感がゼロというのも情けない話ではある。

国民の中の「不安」は、経済的不安の一方で、安全保障面での不安も強
まった。半世紀ぶりに起きた朝鮮半島の南北砲撃戦は、死者が出た韓国
には申し訳ない言い方になるが、日本の「平和ボケ」を覚醒させるには
格好の教科書となった。

「尖閣」をめぐる一連の事態、ロシア大統領の北方領土訪問という非礼
な行動によって、中国とロシアに対する警戒感も強まった。これも教科
書的作用だ。政権の対応がだらしないから、よけいに国民は敏感に反応
するようになる。

国の借金が800兆円、いずれ1000兆円になる、などと聞いて、国家破産が
現実に起きるのではないかという不安も、冗談話とはいえなくなった。

いってみれば、国民は「巨大な不安」の真っただ中にいる。政治が為す
べきは、将来への確固とした国家像と国家戦略を描くことだ。だが、信
頼感を失った菅政権も、これを追い込めない自民党も当事者能力がある
のかと疑われている。

ここは「大連立」しかない。厳密にいえば、社民、共産両党を除いた勢
力による大連立だ。これに民主党左派を排除側として加えてもいい。

この部分は、日米同盟を基軸とした日本の国家像を描き切れていない。
外交・安全保障政策において、明らかにそれ以外の政治勢力とは異なる。
したがって、これからの国家再生に向けての動きには狭雑物でしかない。

*「消費税20%時代」を早急に作れ

大連立で何をやるか。消費税20%時代を早急につくることだ。これは所
得税、法人税の大幅な引き下げとの同時実施となる。税財政構造を根本
的に変えないと、日本の再生は困難だ。与野党で攻防戦を演じている間
は消費税には手をつけられない。

日本がこれほどの財政危機に陥っていても、なぜ国際社会で一応はそれ
なりの扱いを受けているか。それは消費税が5%という世界的に見ても考
えられないほどの超低率で据え置かれているためだ。

国際経済の世界の半ば常識的な見方といっていいのだが、日本はあと15
%ほど消費税を引き上げられる余地があるから、相手にされているので
ある。国際社会では日本の「消費税20%時代」は織り込み済みなのだ。
知らぬは日本国民のみである。

消費税が20%になれば、これで50兆円の税収が出てくる。所得税・法人
税減税で、サラリーマンの可処分所得は一気に増え、個人も企業も活力
が増す。

これを背景に、年金、介護、医療などの福祉政策を立て直し、社会基盤
整備に思いきった投資を行う。だいたいが、ちょっと雨が降れば、山が
崩れ、水があふれ、死傷者が出るという状況では先進国とはいえない。
社会的インフラの整備、つまりは公共事業の余地はいくらでもある。

外交・安保政策では、日米基軸を改めて確立することだ。普天間移設な
どでつまらぬ時間を浪費するようなことはやめる。集団的自衛権の容認
に踏み切る。これによって、日本は「日米同盟をテコに中国に対峙する
大国」となり、東アジア諸国からも信頼される兄貴分となる。

財政面で当面の措置として、無利子非課税国債という手法もある。ゼロ
金利だからタンス預金ばかり増えている。カネを持っている人はいつの
世にもいるわけで、使わないから景気が上向かない。

無利子だが相続税の対象にはしないという新型国債を発行すれば、50兆
円は出てくると試算した人もいる。

このカネが世の中をかけめぐる。日銀のちまちまとした金融緩和策より
もはるかに強烈に作用するはずだ。

*完全小選挙区で、新たな2大政党制を模索せよ

来春の政局展望の中で、大連立の可能性を指摘する向きはある。その動
きをなんとか加速させてほしいものだ。

その時点で、次の衆院総選挙まで2年余りある。2013年の参院選との同時
選挙もあり得る。

ならば、大連立の間に、衆院の選挙制度を変えて、完全小選挙区制にす
ればいい。選挙が近くなれば、大連立を解消し、新たな2大政党に収斂さ
せていく。今度は外交・安保で共通の基盤に立った理想的な2大政党にな
る。

道州制の導入まで決めて、参院を道州の代表院とするといった大胆な参
院改革への糸口もつけられれば、憲法改正の入り口になる。

つまりは、衆院は2大政党激突による政権選択の場とし、参院を政局から
切り離すことだ。これによって、衆参ねじれによる国政停滞という日本
政治を悩ませてきた元凶がなくなる。

こういう大改革をやってのけるのは、民主党と自民党という日本の将来
に責任を持つ大政党の基本的責務であるはずだ。

菅政権は長くはないと見られている。どうせ倒れるのであれば、このく
らいのダイナミックなことをやれば、歴史に名を残すことができるでは
ないか。

【日経BPネット連載時評コラム「我々の国家はどこに向かっているの
か」9日更新】再掲



<<仙谷氏の意外なまでのしたたかさ>>

◆なんなく成立した補正予算

菅直人政権は支持率急落に見舞われながらも臨時国会を乗り切った。政
府提出法案の成立率37・8%はここ10年の国会で最低だそうだが、それで
も今年度補正予算を成立させたのだから、臨時国会最大の使命は果たし
たことになる。

国会閉幕後の記者会見で菅首相が最近になく吹っ切れたような表情をし
ていたのはそのためだ。ときの政権にとって予算を成立させられるかど
うかが勝負となる。本予算でも補正予算でも同じだ。

自民党は明らかに国会運営の対抗手段を間違えた。仙谷由人官房長官の
したたかさが勝ったということになる。

◆自民は国会対策に失敗

自民党の最大の失策は衆院段階で仙谷氏の不信任案を出したことだ。衆
院では与党が多数を占めているのだから否決されるのは当たり前で、与
党から同調者が出るような工作をしなければ意味がない。

不信任案が否決されたということは「信任」されたという意味になる。
そのあと、野党多数の参院に問責決議案を提出し可決されたことで大喜
びした自民党だが、衆院での信任のほうがウエートは高いことをどこま
で認識していたか。

参院で補正予算をたなざらしのままにしておけば、自然成立まで30日が
必要だから臨時国会は大幅延長となり、さらに本予算の越年編成にまで
追い込めたはずだ。採決して否決したことから、両院協議会で衆院の議
決が優先され成立してしまった。

◆「悪者」演じる政治力

外交・安保政策をめぐる相次ぐ失態で青息吐息の菅政権を自民党は救っ
てしまったわけだ。

この状況を仙谷氏が意識してつくり出したのだとすれば、この官房長官
は世間一般の風評とは別になかなかの政治力の持ち主である。

「反小沢」の急先鋒だが、「田中角栄VS福田赳夫」の角福戦争に見る
までもなく、強大な相手を敵に位置づければ自分も大きく見せることが
できる。

「責任感と使命感のかけらすらない言動」「恫喝、でしゃばり、居直り、
はぐらかし答弁」(自民党提出の不信任案)などと悪評ばかりの仙谷氏
だが、これによって、菅首相への直撃をかなり防ぐことができた。東大
全共闘の闘士だっただけのことはある。 

【時事通信コメントライナー9日付拙稿】再掲
★★花岡信昭メールマガジン866号【2010・12・11】★★
http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/entry/1973794/





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最終更新日  2010.12.19 11:54:03


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