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今日はしょうもない雑談です.いちおう自然史ネタかな.
ハヤブサが帰還した. 7年間の旅だった.小惑星イトカワに着陸.さまざまなトラブルがあった.一時は行方不明になったりした.それにエンジンが故障した.目的だったイトカワの土の採取も,あまり成功した形跡はないらしい.それでも,とにかく帰って来た.困難を克服し,予定を大幅に遅れて... 科学者たち,というよりは科学屋たち,と呼びたくなるような人々の笑顔をテレビで見た.この成功に,大きな拍手を送りたい. BBCのホームページではトップから6番目.かなり大きなニュースとして扱われている.もし土が本当に採取されているなら,この程度のニュースでは納まらないだろう. そしてハヤブサはオーストラリアの砂漠の上空で,流れ星になった.大気圏への突入で機体は輝き,バラバラになって燃え尽きた.土のサンプルが入っている(かもしれない)カプセルだけは耐熱素材で保護されていて,砂漠に軟着陸し,そして回収された. 流れ星の映像を見て涙した人もいた.これはズルい.こんな形で人々に感動を与えてくれるなんて,誰が予想しただろう.憎い演出である. さて,とーとつですが, サナダムシの話をしよう.某先生が腹の中で飼育しているという,あのサナダムシだ.腹の中のサナダムシは卵をたくさん出す.その卵は便とともに外界に出る.その便で汚染されたものを口に入れたらサナダムシにかかる. と,ついそう考えてしまうが,じつはそうではない.たいていのサナダムシは「中間宿主」を必要としている.たとえば牛や豚が,人間の便で汚染されたものを食べると,卵も食べてしまう.食べられた卵は牛や豚の体内で発育して幼虫になる.人は牛肉や豚肉を食べて,そういう幼虫を食べることになる.するとサナダムシが腹に住みつく. この例では牛や豚が「中間宿主」である.中間宿主はサナダムシの幼虫をもっていて,人がそれを食べるとサナダムシにかかる.それが「中間宿主」.サナダムシの種類により,中間宿主はさまざまで,たとえば魚であったり,たとえば昆虫であったりする. 人が中間宿主を食べる.飲み込まれた幼虫は,まず胃を通過する.胃の中は強い酸性で,しかも強力なタンパク分解酵素が分泌される.口から取り込まれた物体はすべて,この強酸性の洗礼を受ける.病原体や寄生虫も例外ではない.ほとんどの生物は,胃で殺され分解される.大気圏に突入する宇宙塵(じん)と同じで,大抵はそこで燃え尽きてしまう.ここをどうクリアするかは,食物を通じて人体に入って来る寄生生物が直面する難題である. で,ある種のサナダムシの幼虫はカプセルに入っている.もっと正確に言うと,幼虫の体の一部がカプセルになっている.そのカプセルにサナダムシの頭が折り畳まれて入っている.このカプセルの素材は薄い膜だけれど,物質を透過させない.そして胃の中の酸や酵素で分解されない. 幼虫の体は胃の中でほとんど分解されてしまう.何もかも溶けてしまう.しかしカプセルだけは生き残る.このカプセルは,やがて十二指腸に送りこまれ,胆汁や膵液の作用を受けて簡単に分解する.こうして最後にサナダムシの頭がひょいと出て来て小腸に住み着く.そして体の表面から栄養を吸収してぐんぐん成長する. というような話を思い出したのだった.ハヤブサのカプセルは,サナダムシと同じ仕方で大気圏をクリアしたのだ.今後この方式を「サナダムシ式」難関突破法と呼ぶことを提唱したいが,どうだ? - 却下します. - あ,そう. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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