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きょうは雑談です.
少し古い本ですが,ローズマリー・サトクリフの創作ファンタジー「王のしるし」(岩波書店)を紹介します. (あらすじ) とおい昔,ローマ帝国の支配は辺境の地イギリスにも及んでいた.その北のはずれスコットランドには2種類のケルト人がいた.先住のピクト族と,アイルランドから移住して来たスコット族である. 主人公のフィドルスは,求められてスコット族(馬族)の王マイダーの替え玉を演じ,女王を排除して王位につく.女王は逃げて,ピクト族のもとに走る.女王をめぐり両部族は戦争を始める. 戦争に先立ちフィドルスは「黒い人びと」の長である「緑の丘の老人」に会う.「黒い人びと」が女王の逃走を助けたのは,女王が「春の女神」だったからだ,と老人は言う.「だがあの女は,自分を『呼ぶ声』がきこえた時,逃げ出した」.もう誰もあの女を助けまい. 「呼ぶ声」の意味が理解できないフィドルスに,老人はパンを見せる.パンは次第に「黄金色のチドリの羽根」に見えてくる.フィドルスは必死で意識を現実にひきもどす.チドリの羽根はパンにもどる.老人はいぶかしむ. - 馬族の人なら誰でもチドリの羽根を見るのだが? 疑いの視線を感じたフィドルスは訊ねた.「そんならあんたは,このおれが馬族の王じゃない,と思うのかい?」 「わしにはわからん」と老人は言う.「だがあんたが黄金チドリの羽根をもう一度みるなら,あんたは馬族の王になるだろうよ」. スコット族は圧倒的に優勢なピクト族に大きな打撃を与えた.女王はこんどはローマ人の砦(とりで)に逃げ込む. 砦に潜入したフィドルスは,ローマ兵に捕えられる.砦の司令官はフィドルスを解放する条件として,馬族から千人の兵士を提供せよと要求する.フィドルスは承諾したふりをする.司令官はフィドルスが,馬族の民に向って砦の上から演説することを許す. スコットランド西部の荒々しい自然.海の近くの砦.空を横ぎるチドリの群れ.ひらひらと落ちてくる1枚の黄金チドリの羽根・・・ フィドルスは演説を終える.朝日に照らされた彼の額(ひたい)に,王のしるしである入れ墨がくっきりと浮かぶ.フィドルスは自分の心臓を1突きにして砦から身をおどらせる. (おわり) 千人もの兵を差し出したら,馬族は壊滅してしまいます.たぶんフィドルスには「呼ぶ声」が聞こえたのでしょう. 地震,津波,原発事故.いま危機に直面している極東の国があります.そのリーダーたちには,どういう声が聞こえているんでしょうね. 蛇足. 「黄金のチドリ」Golden Ploverは通称をヨーロッパムナグロといいます. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 22, 2011 11:51:01 AM
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