12月から2月にかけ、続々と商品が値上がりする。パン、菓子、即席麺、ビール・・・堰を切ったように値上げに踏み切る。理由は、原材料費の高騰。新興国の需要急増に加え、エタノール燃料需要が穀物市場を席巻。誰の目にも「値上げは仕方ない」のだが・・・。しかし、そんな“値上げドミノ”の末端をのぞくと、意外に価格は上がっていない。実は今、小売りの現場では、熾烈すぎる価格攻防戦が起きている。主役は、ニッポン最強の価格決定者“消費者”。メーカーと小売りは、シビアな消費者心理と格闘しながら、この原材料高の中で、いかに“価格”と向き合っているのか、現場の生の戦いに密着し、「値上げの冬」の、 “消費者”が君臨する日本経済の現場に迫る。
激安饅頭を直撃した原材料高
「10円饅頭」で一世を風靡したジャパンフードシステムが苦悩していた。
格安と高品質を売り物にしたビジネスの根幹を襲った原材料高。
10種類以上の原材料に包装代など、1銭単位のシビアなコスト管理が厳しい状況となり、ビジネスの見直しを迫られていた。そこで登場したのが新商品の抹茶饅頭だが、値段は1個あたり23円。新価格饅頭で攻勢に出た結果は?
「値上げは認めない!」・・・イオン
スーパー大手のイオンは、次々と“価格凍結”や“PB(プライベートブランド)商品値下げ”戦略を打ち出し、値上げトレンドの中で一気にライバルを引き離そうとやっきだ。そして大手小売りの多くは、この動きに追従する形で、価格の“死守”に走っている。原料価格が上がろうが、まさに、「価格は消費者が決める!」のだ。
「値上げ」しない秘密・・・ベイシア
安さで人気、グループ全体で年商7000億円以上を誇る、関東の雄ベイシア。
買い物客に聞くと、「値段が上がっているとは感じない」との答えが返ってくる。しかし実は、いろいろな商品が減量中だ。ポッキー、カール、ソーセージ・・・。しかしベイシアが安さを維持できる最大の切り札が、自社開発のPB商品だ。
信じられない価格のPB商品が、大手メーカーの商品を駆逐する。
あまりの安さに客はブランドを見ない。そして、ベイシアのPB商品会議では、大手の脅威となる次なる商品が控えていた・・・。
値上げ不可!メーカーの悲鳴!
大手麺メーカー、シマダヤ。淘汰が進む麺業界の中、利益もわずか2%と、ギリギリの企業努力を続けてきた。流通コストをギリギリまで削減、包装のビニールもミリ単位でコスト圧縮してきたが・・・。原料の小麦の急騰には到底追いつけず、去年秋から20年ぶりに順次値上げをすると宣言した。しかし、簡単には進まない小売りとの値上げ交渉。大きな売上げを誇る夏の主力商品で、付加価値アップの商品開発で攻勢に出て、価格アップをも目論むが…厳しさは尽きない。
中小スーパー連合の生き残り!
全国1700店の個人スーパーを組織し、共同購入の価格競争力と地元密着戦略で生き残ってきたボランタリーチェーン「全日食」。本部の巨大倉庫をのぞくと、膨大な量のカップラーメンの箱が積まれていた。元旦に値上げを控え、少しでも多くの商品を買いだめしているのだ。しかし、続々と訪問するメーカー担当者は、次々と値上げを通告していく…大手流通との戦いに生き残るには、いかなる価格戦略を取れば良いのか?
千葉・西船橋スーパー戦争!
半径500メートルに5店舗の強豪店がひしめく千葉・西船橋の全日食加盟店のスーパーに密着。熾烈な価格競争に明け暮れる中、全日食本部が値上げに舵を切るのを、現場ならではの生鮮品(生鮮品は各店舗の個別仕入れ)の仕入れノウハウで競合スーパーに対抗。そしてある日、勝負のセールに打って出た・・・。
「底値買い」主婦に密着!・・・価格を決める主役
上記、全日食の取材店舗を含め、常に「底値」を追い求める西船橋のシビアな主婦に密着。これまで見てきた“川上”から小売りまでの熾烈な状況は無視して、単純にある日のチラシを見比べて、安い店舗で底値商品を買い回る、その生態を追う。
勝ち抜く零細小売りの秘密!
東京・江東区砂町のシャッター商店街。ここにコンビニ程度の広さながら、日々、客でにぎわい続けるスーパーがあった。わずか1キロ先に巨大イオンが出来ても、売上げを落とさない秘密は、独自のノウハウで仕入れる、肉や生鮮品の安さ。そして異常なまでの顧客の囲い込みぶりだ。このスーパーでは、客の自宅のカギまで預かり、冷蔵庫に直接配達するまでに信頼関係を作っていた・・・“価格”だけじゃない生き残り策とは?
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最終更新日
2008.01.22 14:44:41