ローカルIT革命と地方自治体
【1000円以上送料無料】ローカルIT革命と地方自治体/中野雅至【Marathon02P02feb13】価格:2,940円(税込、送料込)著者 中野雅至(著)出版社 日本評論社発行年月 2005年01月ISBN 9784535584136ページ数 206P地方分権の進展の結果,全国一律で中央官庁が護送船団方式で行政を運営するということが消えつつある。問題は,地方分権一括法以後の短期間で各地域が自立して政策を実施するような環境が整っているのかどうかということである。ここでいいたいのは,隣の都道府県や市町村をみながら何かを決定するという「新たな護送船団方式」=「船頭なき護送船団方式」に陥っていないかということである。たとえば,先進自治体と呼ばれるような自治体が着目されるようになる中で,それらのモデルを単純に模倣するといったような取り組みに陥っていないだろうか。また,筆者自身が医療IT化に携わった経験から,これまでよりも多くの情報・選択肢を与えることで,それらを受け取る住民の福祉の向上を図るという政策には,1.短期間で効果が出ない,2.個々人の能力によって格差が発生する可能性は否定できない,3.民生面での取り組みを産業用に転用できるか,という3点で難しさがつきまとうと指摘している。国の補助金に依存した地域情報化政策のみでは,パイの奪い合いになるためうまくいかない。地域特性に配慮した地域情報化の多様性を論じるべきである。医療・産業・教育など分野ごとにも情報化のあり方は多様である。費用対効果で測定しにくいのであれば,それに代わるどのような指標が有効であるのか,情報化への予算配分することに対する正当性をどう主張すべきかについての提言がない。都道府県のすべきことと,市町村のすべきこととの切り分けが不明確である。中途半端な投資ではなく,ダイナミックな構想が必要という提言の具体例として,三重県によるクリスタルバレー構想が取り上げられている。今後成長が見込まれる産業で「日本が世界に勝てる」数少ない産業の一つである液晶産業で,その代表ともいうべきシャープの向上を誘致した。しかし,結果としてこの構想はダイナミックに失敗した。本書を読んで感じたことは,地方自治体が限られた財源をITに投資することはますます困難になってきているということである。自分も含めてITという言葉に非常に魅力を感じて,その具体的内容を検討せずにITという言葉だけが独り歩きしている気がします。ITがマジックワードになっています。IT導入の目的は何かを明確にするとともに,その目的を実現する補完的手段として位置付けておく必要があります。同時にそのために組織や運営の体制などガバナンスを見直さないと思ったような効果が得られないのではないか。成功事例を取り上げるときには,以上のようなその地域特有のオフラインの条件をしっかり考察しなければなりません。したがって,ある地域で成功したからと言って,その成功モデルを他地域にそのまま敷衍できるとは限らないことを肝に銘じるべきです。