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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 大奥 』 よしながふみ (2005年~) 単行本7巻まで出ているが、とりあえず第1巻のみ読了。 男子にのみ致死性の高い謎の伝染病により、男性の人口が激減してしまった…という仮想の江戸時代。 表舞台の政治や家業などの労働は殆ど女性が担い、生存率の低い男子は、ただ、 「子種」 を持つ宝として大事に育てられる 「男女逆転社会」 となっている。 婿をもらえる女性は武家や裕福な商家の娘に限られ、貧しい家の娘は 「子種」 を求めて花街で男を 「買う」しかない。 …こうした設定だけ聞くと、男にとっては 「極楽のような世界だ」 …と思うかもしれないが、大事に囲われ、生殖活動だけを期待される人生の 「悲哀」 といったら、男性だからこそ、格別なものを感じる。 田嶋陽子先生のように、 「女は男社会の犠牲になってるのよ!」と言葉でがなり立てるよりも、男性に、これ読ませた方が、実感を以て伝わるのではないだろうか。 当然ながら、幕府中枢も、将軍や老中などの要職は女が担い、大奥には選りすぐりの (見た目優先の) 男ばかり。 中には、 「男の園」 の設定そのものや、よしながふみお得意の 「BL要素」 に目くじらを立てて、 「気持ち悪い」の一言で切り捨てるレビュアーもいるようだが、シャレの通じない人達だなあ、と思う。 作者は、 「女人禁制」 で 「逆ハーレム」 の大奥をただ描いて、独りよがりに 「萌えて」 るわけではなかろうに(多少はそれも楽しんでるかもしれないが)。 よく、女同士の争いは醜いとか、ママ友の付き合いはドロドロしてる…などと、さも、 「自分は違う」 とばかりに、軽蔑する人がいるが、同じ立場に置かれれば、誰でも、傍目には 「くだらない」 葛藤に、意図せずとも巻き込まれるリスクを負っているものだ。 女性がことさら 「低レベルでくだらない」 のではなく、男女に拘らず、 「非生産的で閉ざされた」 集団においては、人間の心は荒んでいくのが常道…なのだと思う。 特に、お上の権威の誇示と生殖活動のみの目的で集められ、逆らうことが許されない大奥は、「歪んだ世界」の象徴だ。 だからこそ、それに抗い、ただ高潔でいようとする人物の美しさが、際立って見えるのだ。 …それにしても、男性の人口が激減したからと言って、男女の立場が逆転するという発想は、話をもっともらしくする為の飛躍的理屈であるにしろ、なかなか面白い。 イスラム教で一夫多妻が認められているのは、古来、余りに内戦が頻発し戦死する男性が多く、未亡人や未婚 の女性が増えてしまい、そうしたあぶれた女性を 「救済」するために定められた制度がそのまま残ったのだ…と、習ったことがある。 女性が公の場で肌や顔を隠すことを強いられたり、家に閉じ込められたり、一見、男尊女卑に見られがちなイスラム教だが、元の理念は案外、女性愛護的というか、女性を守らんが為のものだったりする。 そう考えると、こうした 「男女逆転大奥」 が、存外、すんなり想像しやすいのは、やはり、日本人が本質的に「草食性」 だからなのかもしれない。 ともかく、 「BL要素」 とは言っても過激なものではないし、BL で慣らした作者だけあって、キスシーンなどは絵的に切ないほど美しい。 フランス革命期のコスプレ的世界も、現代劇にも何故かマッチする、よしながさんの絵柄だが、江戸の髷姿が全く違和感ないのも、大きな特性だと思う。 <関連日記> 2012.4.16. 切ない恋とSM心理と・・・ よしながふみ 『 執事の分際 』 2012.5.9. 嘘くささの中のリアルと、 「オタク」 の本質と ・・・ よしながふみ 『 フラワー・オブ・ライフ 』 2012.5.14.強くオススメ はできませんが ・・・ よしながふみ の BL 作品
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最終更新日
2016年10月11日 23時23分32秒
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