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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 脳内ポイズンベリー 』 水城せとな (2010~15年) 電子書籍無料版およびレンタルにて、全5巻 読了。 実写映画 (2015年) は未見。 バイト感覚でケータイ小説を書いて細々と生活する30女の恋愛を描いた作品。 恋愛の展開自体は 余り夢のない三角関係で、目新しさも美しさもないが、ヒロインの思考を 「脳内会議」 という形で、とことん可視化して見せるところが斬新だ。 しかも、脳内会議のメンバーが、「議長」 「瞬間の感情」 「ポジティブ思考」 「ネガティブ思考」 「記憶」 …と、担当別にキャラクター化 (名前付け) され、見た目も考え方もタイプの異なる男女が、「次、どう行動すべきか」 喧々囂々 言い争ったり、ヒロインの動揺や疲労を メンバーそれぞれの個性で表現する様子が、とにかく可笑しい。 並行して連載され、割と万人受けしていた 『失恋ショコラティエ』 と比べると、読者の好き嫌いは分かれるようだが、私的には寧ろ、こっちの方が面白かった。 Amazon の低評価のレビューを見ると、「ヒロイン他、キャラクターに魅力がない」 とか、「(脳内会議の)セリフが多すぎて飽きる」 といった意見が目立つが、そもそも、意志薄弱なダメ女の、ダメダメな恋愛であるからこそ、脳内葛藤のくどさ、滑稽さが活きるのであって、「前向きで素直な (悪く言うと 深くものを考えない) ヒロインと、常に理想通りの反応をしてくれる完璧なイケメン」とか …の設定だったら、この表現世界にする意味もないと思うのだが…。 …つうか、少女漫画読者、「少女脳の三十路女」 には、キビシーな。 『きょうは会社休みます。』 や 『ダメな私に恋してください』 の感想でも書いたけど…。 20歳の時点で優柔不断な人は、30歳になっても劇的には進歩しないよ…、ハッキリ言って。このヒロインのように、その間の挫折経験や、加齢による自信低下で、かえって、臆病になり決断力が低下することも多い。 「誰しも葛藤している」 と言う人もいるが、「ネガティブ思考」 の暴走を抑えきれなくなったり、過去の苦い記憶が決断を邪魔したり、傷つくのが怖くなり思考が停止してしまったり …という心理は、年齢が上がるほど悪化する人もいるものなのだ。 水城さんの、上記 『失恋ショコラティエ』 や、過去のBL作品 『同棲愛』 の感想でも述べたが、そもそも、この方の描く恋愛やキャラクターは、大体がどこか歪んでいる。 「平凡だけど、とことん性格のよいヒロインが、必要以上に完璧なイケメンに 一途に愛される」 ストーリーを読みたいなら、この人の作品には余り触れない方が良い。 欠点ばかり目立つ男女の、それぞれのエゴが招く行き違い、相手の為を思っての行動ですら、ちょっとしたキッカケでこじれていく恋愛を描く作品が多いので、「めんどくせ~、恋愛って、めんどくせぇ!」 と、ヘタすると、読むだけで夢を失いかねない。 ただ、常にモテモテで恋愛の駆け引きの上手い人にとっては、このヒロインは 「支離滅裂」 にしか見えないかもしれないが、手酷い裏切りや失恋を経験している読者ならば ある程度、感情移入できると思うし、ラストでは、多かれ少なかれ 共感や充足感を得られるのではないだろうか。 <関連日記> 2012.8.30. 最終的に誰と誰がくっついても、どうでもいい恋愛漫画 ・・・ 水城せとな 『 失恋ショコラティエ 』 2013.8.24. 「一途さ」 がまねく 悲恋の数々 ・・・ 水城せとな 『 同棲愛 』 2014.4.8. 「純情」 を維持することの希少さ ・・・ 藤村真理 『 きょうは会社休みます。 』 2015.4.3.あり得ないストーリーだからこそ、人物設定にはリアリティが欲しい ・・・ 中原アヤ 『 ダメな私に恋してください 』
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最終更新日
2016年10月10日 23時03分57秒
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