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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 月影ベイベ 』 小玉ユキ (2013年~) 電子書籍無料版 およびレンタルにて、既刊6巻中、5巻まで読了。 地方の町 (富山市) を舞台に、「おわら」 という郷土芸能 (舞踊) に青春を賭ける高校生男女らの姿を、彼らの親世代の過去の秘密を絡めつつ 描く作品。 前回、 『ひるなかの流星』 の感想で、 「無駄に大ゴマを使い過ぎ」、 「読みやすいと言うよりページを稼ぐ為の手抜きに見える」 …と批判したが、少々その話を引っ張らせてもらうと、真に 「読みやすい」 漫画とは、この小玉ユキさんのような作風を言うのではないか …と私は思う。 整理されたコマ割、余計な描き込みを排しながら、要所では背景が的確に描画され、場面転換もスムーズ。 日常描写や細かいエピソードに無駄がなく、過剰なモノローグにも頼らず、セリフや表情で人物の心情までを想像させる描写力…。 勿論、若い少女漫画読者の中には、とにかく絵的な可愛いさや、男キャラのカッコよさが無いとテンションが上がらない …という人がいるのも理解はできる。 私自身、小玉さんの作風が 「特段に優れている」 とか、「大好き」 とまでは言わないし、「無駄ゴマ」 や 「脱線」を全否定するつもりもない。 引っ掛かりなく、スラスラ読める作品と言うのは、裏を返すと、ストーリーに没入はできても、かき乱されるほどの衝撃や感動も無いままに読み終わり、読後感は良いが、じきに詳細を忘れてしまうものも少なくない。 だが、少なくとも、大ゴマやアップを多用しなくても、人物の心理や魅力を表出することは可能だということを、一部の漫画家や編集者は も少し勉強して欲しい。 小玉さんの漫画のように、一見、表情のバラエティーに乏しそうな絵柄でも ポエムもどきのモノローグが少なくても、ストーリー運びさえ良ければ、読者の想像力は自ずと広がるものだ。 最近は 「キャラ設定」 や絵柄さえ良ければ、中身の薄い (或いは、話が進まない) 作品でも、かえって、若い読者には人気が高いようなので、それはそれで良いのだけど、入門的な少女誌に そんなんばっかりが溢れかえると、大人になっても少女漫画を読み続けたいと思うファンは減り、少子化の中、結果的に少女漫画全般が衰退するんじゃないかと心配になる。 『月影ベイベ』 に話を戻すと、たまたまではあるが、『ひるなかの流星』 同様、三角関係から始まり、「無愛想な転校生のヒロイン」 とか 「女子高校生と年上の男との取り合わせ (しかも、歳の差 30)」 とか、設定上、ちょっと共通する部分もあるのだが、これまでのところ、さほど抵抗感や嫌悪感なく読める。 以前 ( 『恋風』 の感想) にも書いたが、やはり、「禁断の愛」 も 「歳の差ラブ」 も、作者の力量や描き方で、だいぶ印象が変わる。 「禁断」 云々を抜きにしても、 『ひるなか…』 の場合、「無愛想ヒロイン」 の長所を示すエピソードを 1巻であらかた描ききってしまい、あとは殆ど、文字通り 「ヒロイン気取り」 のトライアングル・ストーリーに終始した為、彼女の魅力そのものが 終盤、色褪せてしまった感がある (私だけかもしれないが)。 対して、この作品は、設定自体にさほど目新しさは無いが、ヒロインの良さも 謎の部分も、小出しに明かされていくので、人物の背景や恋愛関係の行方への興味が、読み進めるに従いジワジワと高まっていく。 まだ完結していないので、手放しで良作とは言い切れないが、少なくとも、「読みやすく、続きが気になる」という意味では、万人にオススメできる作品だ。 <関連日記> 2013.2.16. 恋に貪欲な中年男がサブい ・・・ 西炯子 『 娚の一生 』 2014.3.5. 「歳の差ラブ」 ったって限度が ・・・ チカ 『 これは恋のはなし 』 2014.3.15. 「実の兄妹」の恋愛の是非 をマジメに問う ・・・ 吉田基已 『 恋風 』 2015.2.16. 心寂しき若者たちが織りなす 友情 と 恋愛 ・・・ 小玉ユキ 『 坂道のアポロン 』 2015.9.5. 「教師と生徒の恋愛」 以上に 気になる問題 ・・・ やまもり三香 『 ひるなかの流星 』
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最終更新日
2016年10月10日 22時21分53秒
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