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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 帝ーの國 』 古屋兎丸 (2010~16年) 電子書籍無料版およびレンタルにて、全14巻読了。 時は昭和…、政財界の子弟の集まる名門男子校で、将来の地位をも左右すると言われる熾烈な生徒会長選挙の闘争を描いた作品。 古屋兎丸さんの作品は初めて読んだが、 『浦沢直樹の漫勉』 で、手を抜かない作画姿勢が紹介されていて、興味を持っていた。 端麗なキャラクターデザインが特徴的だが、ご本人は寧ろ、風景など、背景を描くのがお好きらしく、余りアシスタント任せにせずに手描きで描きこむ様子には感心した。 『漫勉』 観ていて、意外と地道に 「紙に手描き」 されている作家さんが多くて、なんかちょっと安心 (?) したが、古屋さんらの作画の様子を観てて、つくづく自分の常識が時代遅れなんだな、と実感したのは、コマによって、鉛筆や油性ボールペンを使い分けるなど、画材はナンでもあり …らしい、昨今の漫画界事情だ。 昭和の時代、 『漫画の描き方』 的な本を読むと、一様に、ケント紙系の紙に、つけペン (Gペン、丸ペンなど) と墨汁で描く …としか説明されてなくて、当然、カラーページ以外では薄墨の使用なども許されない感じだった。 例えば絵をぼやかしたい場合などは、地道な点描や、白抜きのスクリーントーンを被せるなど、手法も限られていたように思う。 薄墨や鉛筆がNGだったのは 印刷技術が遅れていたせいかもしれないが、つけペン (墨汁) 以外、許されないムードだったのは、未だに理由がよく分からない。 肝心のストーリーだが、基本的に 「生徒会長選挙」 の類の話は、正直なところ 「どうでもいいよな」 …と思ってしまうところはあるのだが、一見、シリアスに見える作画の端麗さに反して、かなりギャグ色が強く、終始 笑えるので、退屈はしない。 ギャグ色が強いと言っても、最近よくあるアニメのように、単なるドタバタやハーレムの舞台や背景として生徒会を用いているわけではなく、社会の縮図として選挙戦そのものを徹底的に描いていて、キャラたちの滑稽な闘争の姿の中に、人心掌握術を見出せる内容にもなっている。 若い読者には、あくまでもフィクションとして面白いかもしれないが、世の中を動かす政治家たちに近い年齢になるに従い、この作品で繰り広げられるバカバカしい選挙戦は、現実社会の政財界での勢力争いと、本質的には大して変わらないな …と、心から思う。 先日の都知事選が象徴的だが、政策よりも結局は人気 (良く言えば、人柄) やイメージ戦略の方が大事で、私的なスキャンダルや後援者の失言などで、簡単に票が右から左に動いたりするのが実情なのだ。 ただ、 「清廉潔白」 な人は国を動かせない (そもそも、動かせるような地位に上り詰められない) という現実を知っておくのは悪くはないのだが、こうして改めて少年向けの漫画にされてしまうと、何とも虚しい気分にもなる。 <関連日記> 2015.8.17. ヒロインが 「恋だの愛だの」 に目覚めたら面白さ激減? ・・・ 辻田りり子 『 恋だの愛だの 』 2015.9.2. プロ漫画家 “創作の秘密” 公開 ・・・ 『 浦沢直樹の漫勉 』
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最終更新日
2016年10月10日 21時49分48秒
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