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2016年10月21日
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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 ヒストリエ 』 岩明均 (2003年~)



電子書籍無料版およびレンタルにて、既刊9巻読了。


紀元前4世紀の古代ギリシア、マケドニア王国内外を舞台に、アレクサンドロス大王に仕えた書記官エウメネスの生涯を描く歴史漫画。


再三言うが、私は西洋史については疎いので、相変わらず まっさらな知識から読ませていただいた。

さすがに紀元前の話だし、ある程度、作者の作ったフィクションが含まれるんだろうなと思いながら読んだが、後でWikiってみたら、出自も前半生も殆ど分かってない人らしい。

つまりは、マケドニア王の書記官になる以前の、エウメネスに直接関わるエピソードは、ほぼ作者の創作ということだろう。


そう言われてみると、いくらなんでも波乱万丈過ぎる少年時代なのだが、そもそも古代の人物の伝記などは真実かどうか怪しい話が多い (どころか、当該人物が実在したかどうかすら確かではない) のだし、信憑性云々をハナから気にせずに読めば、ストーリーにも人物像にも引き込まれることは請け合いだ。

エピソードやキャラ設定などが嘘八百でも、その時代の思想や社会の空気を少しでも読者に感じさせられれば歴史漫画としては成功だろう。


ただ、9巻現在、ようやく、エウメネスが書記官として認められ、ボチボチ史実に基づいた紛争などが描かれ始めたばかり。

連載開始から13年掛かっていることを考えると、 「執筆ペースが遅すぎる」 と批判する一部の読者の気持ちも分からないではない。


もちろん、ネーム (ストーリーやシナリオ) にこだわって時間をかけているのだろうとは思うし、歴史ものである以上、時代考証にも時間がかかるのかもしれないが、これまでのストーリーが、面白いのは確かだが、そこまで練りに練った内容か? と改めて考えると、どう評価して良いのか、よく分からなくなる。

どちらかと言うと心理描写にこだわる作風で、それにコマを費やしている感もあるので、ストーリーそのものに 巻数ほどの読み応えがあるかどうかはビミョーなところだ。


同じく遅筆の歴史漫画で言えば、 『チェーザレ 破壊の創造者』『ヴィンランド・サガ』 ならば、作画の大変さを言い訳の1つにできなくもなさそうだが、岩明さんの場合、お世辞にもそこまで細密な作画とは言い難い。


岩明氏の絵柄は、それなりに味はあるし悪くはないのだが、内容に合ってるかどうかと言われると、これもまたビミョーだ。


『寄生獣』 (1988~95年) の時も感じたが、かなり丁寧に描いていることは認めるのだが、奥行きや動きに欠ける画風なので、残虐な戦闘シーンも なんかちょっと迫力がない。 あんまり絵的なグロテスクにばかりこだわるのもどうかとは思うが、現代的な言葉遣いで 小ぎれいなキャラデザの主人公を見ていると、そこらの日本人少年を描いてるのかと錯覚しそうにもなる。

まあ、血なまぐさい事件の多い時代の中で、常に冷静沈着な主人公を 対比的に描いていると捉えれば、結果的には成功しているかもしれないが、正直、作者がそれを全て計算ずくで描いているようにも思えない。


エウメネスの生涯は歴史的には 「始まったばかり」 で、全てを描ききるつもりであれば、あと何年で完結するのか分からないペースだし、今後を先細りに終わらせるとすれば、一からキャラクター形成してきた意味が分からなくなる。

日本人にとって有名な人物 (せめて “アレクサンドロス大王” 本人とか) なら、少年期だけ描いて終わり、というのもアリだろうが、エウメネスのような、教科書的にはマイナーな人物をわざわざ引っ張り出しておいて、その活躍本番を省略するってわけにはいかないように思う。


ともかく、いくら内容が良くても、いや、良ければ尚更、 「なかなか完結しない」 作品というのも読者にとっては悩ましい存在だ。



<関連日記>
2012.5.19. 篠原千絵 『 天は赤い河のほとり 』…… 功罪相半ばの歴史漫画

2012.5.21. よしながふみ 『 大奥 』…… 閉ざされた世界の 「種馬」 の悲哀

2012.8.17. 横山光輝  『 三国志 』…… 勧善懲悪の戦国物語に辟易

2012.9.5. 神坂智子 『 蒼のマハラジャ 』…… 「中途半端」 が残念な歴史フィクション

2013.2.28. 竹宮惠子 『 天馬の血族 』…… 大作家 最後の大長編 (?)

2013.8.20. 上田倫子 『 リョウ 』…… 歴史フィクションの限界

2013.9.10. 惣領冬実 『 チェーザレ 破壊の創造者 』…… いい意味で 模写名人的な漫画

2014.8.31. 幸村誠 『 ヴィンランド・サガ 』…… 「単純無垢」 が招く 戦争の残酷さ

2014.7.9. 星野浩字 『 臏(ビン)~孫子異伝 』…… 心優しい軍師が魅力の歴史ファンタジー

2014.9.5. 萩尾望都 『 王妃マルゴ 』…… 着飾った少女の視点で描く戦争

2014.9.7. 細川智栄子 『 王家の紋章 』…… 「完結しないこと」 にイラつく ファンの皆様の心情をお察しします

2015.6.11. ヒラマツ・ミノル 『 アサギロ ~浅葱狼~ 』…… 新撰組ファンでもなんでもないが、人物描写に引きつけられる

2015.10.20. 伊藤悠 『 シュトヘル 』…… 殺戮の時代に 「文字」 が持つ 真の役割と救い



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最終更新日  2016年10月28日 21時04分08秒
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