1332404 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

雪白の月

雪白の月

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

つぐみ@夜空

つぐみ@夜空

カレンダー

カテゴリ

コメント新着

キーワードサーチ

▼キーワード検索

ニューストピックス

フリーページ

2016年12月13日
XML
カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 憂鬱な朝 』 日高ショーコ (2008年~)



電子書籍にて 既刊7巻読了 (8巻完結予定)。


明治時代の華族社会を舞台に、爵位や家の存続を巡っての複雑な人間模様や愛憎を描いた BL作品。


BL作品で3巻以上続く作品は、意外に少ない。 一巻完結だったものが人気が出て続編の形で続くことは時々あるようだが、開始当初からストーリーに継続性を見据えた長編作品は、小説のコミカライズでもない限り、かなりの人気作家でないと任されない (引き受けない) 風潮に見受ける。


読者自体、BLに求めるものが偏っている (恋愛とポルノ) ということもあり、この作品に関しても、Amazon のレビューで 「BLとしては早いうちに話が終わってしまっている」 という指摘をされるのも無理からぬところがある。

「主人と家令の恋愛」 という主題自体は BLとしてはありがちで、展開的にも さほどの意外性はないが、BLの範疇には全く収まりきれない丁寧さで 時代背景が描かれ、様々な人物の思惑が交錯してのストーリーが構築されている。


正直、細かいところの時代考証がどれだけ正確かは分からないが、明治期 (はっきりした年代の記載が見つからなかったが、爵位制度の確立が明治17年、妾制度の撤廃が明治31年なので、恐らく、明治20年代頃を想定しているのだろう) の華族らの意識について、ここまでとことん描いているメディア作品は、BL以外でも、そう無いように思う。


幕藩体制崩壊後の特権貴族階級が歴史的には短命に終わったことは 今となっては常識で、この時代を描いたドラマや映画などは、それを分かった上で、儚さを強調して描いているのが、なんとなく透けて見えてしまうことが多い。

勿論、この作品でも、徐々に体制崩壊の予兆は見えてくるのだが、少なくとも前半のうちは、 「華族社会が永遠に続くと信じて疑わない人々 (華族だけではなく下々の者も)」 の姿が予断なく描かれていて、作者はかなり、この時期に関する文献などを読み込んで研究しているのではないかと感心する。


日高さんの他の作品と比べても エロシーンが濃い目なので、やはり BL嫌いの人には余り薦められないが、逆に、BLにしては本筋の恋愛とは無関係な人間模様まで複雑すぎて、コアなファンからも敬遠されかねず、読者が限られるという意味では非常に勿体ないとは思う (しかも、電子書籍の刊行ペースが悪すぎる。 3巻以降、4~6巻が出るまでに異常に間があった)。


作画も相変わらず素晴らしい。 子供から老人まで、どの年代のキャラも上手く描けているし、もともとノーブルな雰囲気のキャラデザが、当時のファッションや雰囲気にも合っている。


ストーリー上、どうしても、状況説明的なセリフのやり取りが多いが、ただの人物アップの対話シーンで済ませず、小道具や動きを織り込んでの作画姿勢にも感服する。

ほんの一例だが、主人公の友人が桃を丸かじりしながら話すシーン (6巻) などは、その美味しそうなことは勿論、桃の入手先の状況や人間関係などの説明も含んでいて、上手いと思った。



…話は全く逸れるが、いくえみ綾の 『太陽が見ている(かもしれないから)』 の最新5巻で、やはり、桃を丸かじりで食べるシーンが出てきて、たまたま、読んだタイミングが近かったので、ちょっと引っ掛かった。

他の作家なら単なる偶然と思うが、いくえみさんの場合、 「さりげないパクリ (オマージュ?)」 の歴史が長過ぎて、つい疑ってしまう。

『太陽が見ている… 』 も、そこここで、いまだに、くらもちふさこの古い作品の影響が散見される。 勿論、ストーリーの根幹ではなく、ちょっとしたセリフやシーンで垣間見える程度だが (しかも、引用元のくらもち作品も既に古すぎる)。

総合的には才能のある作家さんだと思うので、目くじら立てるのは野暮かもしれないが、ひょっとしたら、いくえみさん本人も無意識なのではないかと思うと、ストーリーそのものも、ちょっと疑わしく見えてきてしまう。




<関連日記>
2013.9.19. 日高ショーコ 『 花は咲くか 』…… この人の 「普通の作品」 も読んでみたい

2014.2.7. いくえみ綾 『 潔く柔く 』…… 模倣も ここまで長く続ければ 尊敬

2015.6.16. 津雲むつみ 『 暁の海を征け 』…… 人生に 「ハッピーエンド」 など無い

2015.12.30. 無駄に(?)作画のいい BL漫画家たち

2016.6.22. 西田東 『 天使のうた 』…… 真の愛を得れば、失うことが一層ツラい

2016.7.7. 明治カナ子 『 坂の上の魔法使い 』…… ジャンルに囚われず読んで欲しい ファンタジー佳作

2016.8.26. 杉山小弥花 『 明治失業忍法帖 〜じゃじゃ馬主君とリストラ忍者~ 』…… 漫画の、手法としての魅力を活かしきれていない


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

憂鬱な朝(1) [ 日高ショーコ ]
価格:616円(税込、送料無料) (2016/12/13時点)










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年12月13日 22時03分06秒
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.