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2010年06月26日
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カテゴリ:ブラームスの日々
 土曜日の朝11時ころ、半分二日酔いの身体でだらりとソファーに座ってテレビを見ていると、

 玄関のブザーが、短く控えめに鳴った。

 妻は、「びょういん」と「びよういん」に行くと言って出かけてしばらくした後だったので、忘れ物をしたとしても戻って来るようなタイミングではなかったし、

 先日神保町で買った「日本の仏像」20巻セットも、既に配達済みだった。

 通信販売も頼んだ記憶もないし、新聞の勧誘も4・5月で撃退完了済みだった。

 という訳で、今日、僕の官舎に用のある人はいないはずだったが、

 でもとりあえず、「はーい。」と返事をして、玄関のドアの覗き穴から外を見た。

 人影がない。

 誰かが間違って押して立ち去ったのだったか、と思って一応ドアを開けてみると、

 視線の下に小学校1年生くらいの少年が立っていた。

 「隣と間違えました。ごめんなさい。」と言って立ち去るかと思ったら、

 「あのね、屋根の上に載っちゃったみたいだから、取ってほしいの。」と遠慮がちに、

 しかし照れもせずに言う。

 この少年は、突然見知らぬ官舎のドアのブザーを鳴らし、少し酒の臭いの残った甚平姿の見知らぬオジサンが出てきたのを、何の留保もなしに頼っているのだ。

 気が付くと、僕は、「どこ?」と返事して、反射的に外に出てしまっていた。

 その少年のペースに「乗せられた」と言っていい。

 その少年は、一人で遊んでいたら、おもちゃの一部(それはとっても大事なものだ)をなくしてしまったらしい。

 その少年の指し示す場所は、官舎の倉庫の屋根の上だった。

 さして高いものじゃない。

 せいぜい、2メートル程度だ。

 でも、僕の身長は170センチ。脚立の持ち合わせもない。

 とりあえず、その少年と一緒に、官舎の階段を登って上から確認することにした。

 少年は、「ほら、あそこ」と言う。

 僕には、ただの石にしか見えないよ。と意見する。

 なくしたのはどんなの?と聞くと、

 一見すると石に見えるかもしれないけど、真ん中部分が赤くて、白くて丸いの。

 大きさは、「これくらい」と言って両手でピンポン玉くらいの小さな輪を作って見せた。

 僕も視力には自信はない(こないだの免許更新で「眼鏡等」の条件を付けれた。)が、

 神の被造物たる自然物か、工場で作られた人工のおもちゃかどうかの区別くらいはつく。

 でも、しょうがないから、少年の指示のとおりに、官舎の階段を降りて、

 その屋根の部分に両手を掛けて飛びついて、懸垂の要領で屋根の上を覗き込んだ。

 しかし、そこにあるのはただの「石」だ。

 「ピンポン玉くらいの大きさで、真ん中が赤くて、白くて丸いの」ではない。

 僕がその結果を「報告」すると、

 「じゃあ、屋根を飛び越えてその辺の草むらに落ちたのかもしれない」という新説。

 季節は6月後半。午前中とはいえ、少し動けば汗が出る。

 僕も意地になってきた。

 ドクダミが少し混じった草いきれを感じながら、

 しゃがみこんで、結構本気で探し始めた。

 少年から意外な提案があった。

 「草を全部刈ってしまえばいい。」

 そしたら確実に見つかる、ということだろう。

 しかし、僕は反対した。

 「あのね、ここには大きな紫陽花も咲いてるし、官舎と言っても一応人様の庭だし、そんなこととはしたらいけないんだよ。」と。

 それに、その案は大変に効率的でない。

 今から二人で(実質的には僕一人で)このあたり一帯の草刈りをすることは不可能だ。いや、不可能でないにしても、時間がかかりすぎる。いくら僕が午後から特に用事がないから言っても、せっかくの休日なんだから、ゆっくり休ませてほしい。

 しばらく、二人で(実質的には僕一人で)「草の根を分けて」探した。

 その間、すこし少年と話をした。

 官舎の子ではなく、近所の商店街に住んでいること、(少なくとも今日は)一人で遊んでいること、など。

 で、見つけた。

 見つかった。

 その「ピンポン玉くらいの大きさで、真ん中が赤くて、白くて丸いの」を。

 草むらの中から出てきた。

 今はやりのプラスチック製のベーゴマの一種だった。(あとで、妻からそれは「ベイブレード」というものだということを教えてもらった。)

 少年は、ずいぶん喜んだ。

 汚れているから洗いたい、と言ったので、官舎の水道で洗わせてあげた。

 「わざわざ、どうも、ありがとうございました。」

 と、少年は、ずいぶん大人びたお礼を言った。

 「どういたしまして。次はなくさないように、気をつけて遊びな。」

 と言って、別れた。

 僕はその後、近所の公園に走りに行った。



 夕方、妻と一緒にカレーを作りながら、その話をした。

 彼女の感想は、そういう少年がいるということは、この辺りの共同体も捨てたものじゃないんじゃないか、というものだった。

 あの少年、来週もまた来ないかな。

 別に健全な共同体の象徴でなくてもかまわないんだから。

 





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Last updated  2010年06月26日 23時30分00秒
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