諧謔なПＹРЭВさん

日拳師匠と最後に会ったのは、10年くらい前だったか。
　毎年おたぬじょうびには必ずメールを送信し、それ以外にも数か月に一度はメールで安否確認を兼ねたご機嫌伺いをしていたが、2年前から音信不通となっていた。
　最後に電話したときに、「話したくない」と言われたので、電話はそれっきりだったが、自宅訪問に当たって電話したら「電波の届かない地域にいるか電源が入っていません」アナウンス。
　そして。
　先週土曜、師匠のおたぬじょうびにアポなしで自宅を訪問するんだが。

　玄関扉に貼り紙。

　「無断退去のため契約解除し、鍵は取り替え、家財一式は管理者で処分した」

　え？

　行方不明やん？
　
　10年前に内縁の奥様がお亡くなりになり、かなり精神的に落ち込んでいらっしゃった。
　その後、精神科に通院していると聞かされ、おれも経験があるのとコロナで直に会う機会を逸していたのも重なって、この日に至ったんだが。
　生年は昭和18年なので、もう80歳を超えられている。
　マンションは恐らく賃貸だったのだろう。
　おひとりで今どうされているのか。
　携帯電話のメールも一時着信拒否されていたが、今はとりあえずメッセージは送られている様子。
　連絡がつかないアナウンスが聞こえるので、まだ携帯電話の解約をされていないはず。
　そう考えると、まだご存命だと信じたいのだが・・・

　敦賀のＭ田さん夫婦の行方もしれず、日拳師匠の行方もしれず、おれにとって、親と慕う大切な方々の最後がこうだなんて、悲しい。