江戸城外濠の講座を受講していて、野口富士男のことが出てきて、そうか、そう言えば、
外濠界隈のことを書いていた、と思い出しました。
それで本を取り出して読みました。
『私の中の東京』(中公文庫)の「外壕線にそって」です。
飯田橋から、四谷、赤坂、虎ノ門から三田、札の辻への道を、じっくりと歩きます。
昔を思い、永井荷風などの文学作品を引きながら、丁寧に書かれています。
読むと、歩いて知っているところは、身に染みます。
飯田橋から、虎ノ門あたりまでは、よく知っている道です。
どきどきするほど惹かれます。
これが書かれたのは昭和51年ですから、それからの道筋の違いを考えるのも楽しみです。
一度この本を持って、外堀線をゆっくり歩いてみるつもりです。
少し気になったところだけ引いてみます。
野口富士男は、高速道路の風景には、新しさを認めています。
「そのあたり(赤坂見附)の高速道路の出現を憎む人もあるが、私は高速道路のある現状も東京新風景のなかでは好きなもののひとつである。幼児から現在に至る推移のなかで私には常に変化する都市が東京だという考えが固定観念となっていて、ここの風景が高速道路の出現くらいには負けぬだけの力をもっているところが気にいっている。」
日本橋の高速も、野口富士男はそんなに気にしていません。
むしろ許せないのは、埋められた壕だと書いています。
「言語道断なのは、外堀公園より早く埋め立てられた四谷見附と食違見附のあいだの壕を、上智大学がグラウンドとして占有して部外者の立ち入りを禁じていることである。埋めたのは大学でないが、土手にトンネルをあけてグラウンドに降りる道をつけたのは、大学だろう。公園とトンネルの二つを、外壕のもっとも不届きな汚点だと、私はおもう。」
こうした視点、観点も、すごく刺激になります。
私は上智のグランド見慣れていて、それほどには思いません。むしろ、高速道路の方が気になります。
でも、この本を読んで、よく考えてみるべきだなと思っています。
ぜひ、この本を手に、ゆっくり歩いてみて、考えたいです。