ある40歳になった専業主婦は、この歳になるまで自転車に乗れませんでした。
子供の頃、覚えるチャンスを逃し、それ以来恐怖心の方が先に立って今更で
きないと思い込んでいたのです。
ところが、近所の商店街がシャッター通りと化し、買い物へは少し遠い大型店
舗へ行かざるを得ません。
PTAの役員にもなり、家事のかたわら忙しく動き回らなければなりません。
当然ですが、お母さん仲間は皆、スイスイ自転車に乗っています。
彼女の「覚えねば」という気持ちが、次第に「覚えたい」という欲求に変化して
いきました。
そして、夫のコーチのもと特訓がはじまります。
子供たちまで、「お母さんがんばれ!」と応援します。
二週間をかけ、とうとう自転車を乗りこなせるようになり、彼女の行動半径は
飛躍的に拡大しました。
さて、これは中川昌彦氏が、著書『 自己啓発のすすめ 』の中で推奨してい
るMUDサイクルの事例を、中川氏の奥さんの話を参考に書かせて頂いたフィ
クションです。
MUDサイクルとは、Motivate(動機づけ)、Understand(理解)、Do(実行)の
頭文字をとったものです。
何かをヤル気になったら(M)、その内容を理解(U)、消化し、実践(D)応用
できてはじめて自分のものになるという考え方です。
このサイクルが一周したら、次はより高いレベルのテーマに向かって自己動
機づけをはかっていきます。
これは仕事上の組織の中で取り入れられている、PDSサイクル(Plan:戦略
策定 Do:戦略展開 See:評価)の考え方とよく似ています。
しかし組織においては、組織的に展開される必要があり、難しい面もあります。
めいめいがバラバラにやっていては、かえって効率が悪くなるからです。
したがって計画は欠かせませんし、上司からの命令という強制力もしばしば
働きます。気の進まない仕事(違法や反社会的なものを除く)でも、このサイ
クルを回していかなければならず、動機づけは必要条件ではありません。
その点、自己啓発に関しては何の制約もありません。
自己啓発のサイクルと仕事のサイクルは、その目的も働きも異なります。
MUDとPDSを、うまく使い分けることができれば、優秀な仕事人になれるか
もしれませんね。
自己啓発のすすめ
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