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カテゴリ:公演を終えて
さて、ようやく通常の生活にも慣れ、普通の日を送っているわけだが、一般の人はこれが当たり前なのだと思うと不思議な気分になる。
そして実感する。 私にとっての日常、普通というのは『芝居のある生活』なのだということ。 休みなどなく、仕事と稽古と繰り返し、そして本番を迎える。 人からは変だといわれるが、私はもうこんな生活を10年以上送っているのだ。 今では何もないことなど考えられない。 そんな私の生活が、サクラに投影される。 サクラ・インペリアル 『眼 留』『残 華』『 零 』と4年続いたシリーズの主人公。 もともとはお茶の名前。 意味をもたない彼女の名前は、いつしか意味を持ち、そして確かにそこに存在した。 地に足のつかない架空の人物が、地に足つけてそこで悩み苦しむ。そしてそこに生きる。 私の、そしてサクラの今までの生き方そのもの。 この作品において、私もサクラも生きる意味をつかんだのだった。 まずアレクサンンドラ・ダヴィット・ネールという人物から紹介したい。 彼のモデルは『カウントダウン・ヒロシマ』という本の著者であり、元BBCTVのドキュメンタリー監督だったスティーヴン・ウォーカー氏。 たまたま興味を持って買った本だったが、想像以上の収穫。 脚本の中にもあったとおり、彼は私が松重氏に会った数ヵ月後に取材に行っている。同じ時、同じ人物に会い、同じ話を聞いた。 彼はもちろん日本人ではない。しかし、松重氏に対して私と同じものを感じたようだった。 そこにあることは私には手にとるようにわかり、そして外国から見たヒロシマへのカウントダウンを知った。まさにそのままの話が脚本になっているのだ。 このキセキのような偶然があったために、当初予定していた話とはまったく違う話になっていった。私にとってアレックスは理想であり、また親しみのあるキャラとなった。 私が屈折しているせいか、役者は随分やりにくかったようではあるが・・・・。 次に香野まりあについて 外人なのに『サクラ』、日本人なのに『まりあ』。これは私の遊び。また今回はアメリカ、イギリスがキリスト教国なのでそちらのカラーを強くした。だから聖母のイメージでこの名にした。1作目の『眼 留』にでてきた相川幸という人物に変わる、まっすぐで純粋な女性が欲しかった。これはこの役をやった勝平ちゃんのおかげでさらに人間味が増した。 面白く、なんだか頼りなさそうなところもあり、でも信念をもつ、芯の強い人。見事にそこに生きた。サクラの心を動かしたのはきっとこの人。何故そういえるか・・、本番のとき、私の心に彼女の声が響いたから。彼女が信じたキセキ、『こんなこともあるから明日からが楽しみになる。人の一生も捨てたもんじゃない』その言葉は私の中にすっと入り、思わずうなづいた。客の心にもきっと届いたことであろう。 もう一人の主人公ファー 前作を書いた時に複線をはりながら、ファーについては何一つかけなかった。3作目はファーの過去を描きたいとすでに決めていた。神の領域に生きる者という設定だが、現代を描くこの作品に実にマッチしない。ミカ、リエルもそうだが、某劇団の演出に『姑息な手段』と言わせた私の仕掛けなのだ。 そもそも、こんなに力をもったやつらがあんなに悩むか?そこがミソ。いつの間にか一番人間くさくなり、いつしか現実と虚実が重なっていくのだ。 前回圧倒的な力をもち、リエルを助けた彼女が、一転して落ちていく。前作を見た人たちには意外な面もあり、また彼女の気持ちもわかりやすかったのではなかろうか。 ミカについて ファーを貶めるためには、絶対権力が必要だった。ミカのモデルは演出している時のあつみ空光そのもの。油断のならない人物。でもその実、誰よりも傷つきやすく、それでも熱く未来を信じている人。彼の存在がまたうそ臭いのだが、原爆開発という流れの中で、現実が神の存在とミカを本物にしていった。不思議なものだと私は思う。 リエルについて 今回出すか出さないかで迷った役。 しかし、ファーを明確にするためには正反対の人物が必要。そして心を動かせる人間くさいキャラ。彼女の存在がまた世界を構築するためには不可欠であり、2時間20分を持たせた要素の一つである。リエルというよりも、普段から私と対極に位置するとーじまきの存在が大きい。 原爆シーンの彼女の演技は最上級。問題はいつも本番だけやれるという気まぐれさだけ。 そんな彼女の存在が、リエルそのもの。終わってみて、えらく人気があったのも存在感の大きさを伺える。 大和、ノエルについて この二人は相生版『眼 留』でのエピソードをこっちに持ってくるために必要だった。 だからイメージは風弥がやったフーヤ・ブルーム・フォンテイン、私がやったクウコ・フェスタンドールの二人の性格が強い。同じ職業の人間がサクラを攻めることで、精神的に追い詰めていく。 兄の死とでてこない彼女の大賞をとった写真、これをお客さんにイメージさせるのに苦労した。ノエルをサクラとダブらせてみたり、現代の事件を思わせる話をさせたり、今に繋げる役割があった。現にミャンマーの事件は記憶に新しいと思うが、それを参考にしたようなセリフも入っていたと思う。ただし、あの事件は私が脚本を書いたあとにおこっている。たまたま偶然繋がった。不思議な縁を感じる。 グレースについて REIKAがいつも主役になってもヒロインににはなっていないことから、ヒロインを別に作ろうというわけでヒロイン化された役。 もちろんサクラの兄の存在を明確にするために作られた人物で、私が役者に惚れてアテ書きした役である。リエルとのコンビもなかなかいけるが、サクラの心の帰る場所にもなる。彼女の純粋な性格のおかげで、兄のよさが印象付けられる。私は彼女の『おかえりなさい』がとても好きだった。 マルク・インペリアルについて これは実在するローレンスという記者をモデルにつくった。半分ノンフィクションの人物。 妻は前作で登場した古賀巡子(園子の友達)。前作の私の演技のせいで、他の役者にひどい誤解をされていたかわいそうな役。説得するのに随分時間を費やした。 本当は時の大統領トルーマンとのやり取りなども入れたかったが、何分時間がないのでカット。実験をわかりやすくするために随分工夫した。 私はとても好きなキャラの一人である。 月見草太郎 実際出てこないのに、見事にサブリミナル効果が成功し、客にばっちり植え付けられた人物。 モデルはもちろん松重美人氏。 サクラを救っただけでなく、私をも救った。 本番には本当に松重氏がいた。本当にシリーズ通してキセキそのものの役だった。 そして最後にサクラ・インペリアル 私自身の中から生まれた人物。そのため暗い性格。しかしREIKAが演じることでちょうど良い人物になる。彼女の悩みは私の悩み。本当に答えが見つかるのかどうか・・それは本番の時にしかわからない。サクラは本当に成長した。地に足を着け、思うところをすべて吐き捨てる。 私も何度も彼女にシンクロした。 実に中途半端だが、今睡魔に負けそうです。 感想も含め、明日につづく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年12月07日 02時29分36秒
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