禁忌の恋・・・第8話
第8話―早速城へ・・・―「最初、見られたときはどうしようかと思ったけど、まぁなるようになったし。 これで良かったのかもね。 それに、シェインは誰にも言わないって言ってくれた。 普通はこの翼を見たら逃げ出すはずなのに・・・。 それに、私が飛び去ろうとした時止めてくれた手、優しかった」ユウナは、シェインに握られた感触がうっすらと残る手を、頬にあててそのまま宿屋へと飛び去っていった。けれど、その全ての経過を空から眺めていたものがいた。それは、灰になって消えた魔女のリンダの妄執だった。『シェイン、許さぬ。 私にこのような屈辱を与えるなどと・・・。 あの童は、天使族の娘に惚れている様子じゃ。 小娘を使って、憎きシェインを誘き出して殺してやろうぞ・・・』そう呟くと、空に広がっていた黒い塊はいつのまにか消えていた。次の日の朝、早速ユウナはシェインの元へと遊びに行っていた。「ねぇ、シェインぶすっとしていないでもっと話したら? 私がここに勝手にやってきたこと、そんなに怒ってるの?」不思議そうにシェインの顔を覗き込むユウナ。その態度に、もう我慢しきれなくなったのか、シェインの怒声が部屋に響いた。「当たり前だろう!! 大体、ユウナは警戒態勢がない。 そんな状態じゃ、いつ天使族だとばれるかわからないぞ?」シェインはうな垂れた様子で、椅子へと座った。ユウナはというと、いつもシェインが寝ているベットへ横になっている。「そんなに大声出さなくても良いじゃない。 私だって気をつけているつもりだもん。 あ、そだ。ここに来る途中、シェルに会ったよ。 会ったって言うか、空から見下ろしただけなんだけどね」その飛んでいた姿を、シェルに目撃されていないか、などの警戒心はユウナにはやはりないようだ。「ところでユウナ、この前のこと本当に誰にも喋るなよ。 それと、まだリンダの妄執が俺やお前を狙っているかもしれない。 気をつけてくれ」シェインは難しそうな顔をして、ユウナに注意を促した。もちろんそのことは、ユウナだって理解しているつもりだった。けれど、後にこの心配が本当のことになってしまうのだとは、誰も予想してはいなかった。「解ってるって。 でも、私あの夜のことにはあんまり介入してないと思うんだけどなぁ。 まぁ、ああいう類の魔女さんって、妄執やら憎しみやらが強いから気をつけないとね」ユウナはそう言うと、シェインの隣の椅子に腰をおろした。「人の心配をするのはいいけど、自分の心配もしなさないな。 シェインはいずれこの国をまとめる皇子様なんだから。 じゃあ、私はそろそろ帰るわ、じゃあね」そう笑って言うと、ベランダからユウナは飛び去っていった。「ユウナのことを好いているから、心配をしているのに。 お前はなんにも気付いてないんだな・・・」その姿をいつまでも見送り続けるシェインからぽつりと一言、独り言がもれていた。