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うずらの小部屋

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2007.08.15
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カテゴリ:TS小説
指定された場所にいくと、真人はすでに待っていた。
手持ち無沙汰な感じにケータイをいじくっている。
昼間はとっさに良いと言ったけど、行きづらいな。
今日一日大丈夫だったんだから、バレることはないにしても……。
リリリリン、リリリリンッ
物陰から様子を見ていると、カバンがけたたましい音を立てた。
あわてて取り出すと、電話は真人からだった。
「も、もしもし」
「あー、姫井? 今どの辺?」
「え、あ、もう、すぐつく、よ」
「そっか。それじゃあ、待ってるから」
本当のことを言ってから、後悔した。
これで逃げられなくなって、逆に良かったと考えるべきだろうか。
曲がり角から小走りに真人の方に向かう。
ローファーってなんでこんなに走りにくいんだ。
ウチの学校みたいにスニーカーにしてくれればいいのに。
しかも体力がないから、30mほどの距離でもすぐに息が切れてしまう。
「はぁ、はぁ、おまた、せ」
「すまん、せかしたか?」
「うう、ん。そんなこと、ない、よ」
「そうか?」
「うん」
二人して沈黙。
姉貴があんまりしゃべる方じゃないって知ってるだろ。
話題提供してくれよ。
気まずいからさぁ。
「えっと、じゃあ、行こうか」
「え?」
がっしりと力強い腕が伸びてきた。
それに似合わずやさしい動きで手を握られる。
我慢だ、我慢。
振り払うわけにはいかない。
女の子なら好きな人に手をつながれたら、嬉しいはず。たぶん。
「あ、の、どこ、へ」
「どこ行きたい? 普通だったら、カラオケとかゲーセンとか行くんだけど……そういうの苦手そうだよな」
「あ、う、ん。でも……」
「何? 言ってみろって」
「ぬいぐるみ、好き」
姉貴の部屋はファンシーな動物たちと少女小説で埋まっていると言ってもいいぐらいだからな。
どうせだからコイツにプレゼントとして取ってもらおう。
まあ、オレも頼まれてやったりするから、苦手じゃないけど。
「それなら、UFOキャッチャーが多いゲーセンにでも行くか」
「う、うん」
二人で手をつないだまま歩き出す。
さすがに夕方だけあって、駅は人が多いなぁ。
特に学生や、帰宅途中っぽいリーマンがうじゃうじゃ。
キョロキョロしていると、前から来たお兄さんにぶつかりそうになってしまった。
「っぶねぇなぁ……」
「あ、す、ごめ、なさ」
幸いいちゃもんつけられることもなく、やりすごせた。
いつもだったら、絡んでくるのがいるからなぁ……。
女だってことと、デカいのを連れてるってのが大きそうだ。
その真人が急に肩を抱き寄せてきた。
嫌悪感が顔に出たのか、言い訳がましく口を開いた。
「いや、ぶつかると危ないだろ。もっと密着した方がいいかと思って……」
彼氏の行動としては、そう間違ったものではない気もする。
いきなり大胆だ、とは思うけど。
でも、実際、姉貴ってすぐふらふら~っとこけそうだもんな。
心配する気持ちも分かる。
その心遣いに免じて、オレも彼女っぽく振舞ってやるか。
「ありが、と」
微笑みながら、さらに体を密着させてやる。
歩きにくいけど、これなら恋人みたいで真人も悪い気はしないだろう。
数分行ったところに、そのゲームセンターは建っていた。
カップル御用達というか、これ、男だけだと入るの無理じゃないか?
そう思うほどプリクラの機械とぬいぐるみしか置いていない。
ほんの数台、アーケードゲームもあるけど、閑古鳥が鳴いているみたいだ。
実際、中にいるのもきゃわきゃわとかしましい女子高生がメインだ。
うるさくないにしても、今のオレもその一人になるんだけど。
「姫井はどんなのが好きなんだ?」
「え? あ、う」
最近姉気がよくねだってくるのは、と。
店内を見回すと、ちょうど同じキャラクターのが見つかった。
「この、ブタの、が……」
「へぇ、これかぁ」
オレが駆け寄った機械の中には、四角っぽいブタがわんさか積んである。
白と黒の2色だけなんだけど、どうもお気に入りらしい。
服もモノトーンがほとんどだしなぁ。
「んー……どれがいい?」
「えっ、と」
奥に乗ってる白いの、取れそうだな。
でも、それを言うべきかどうか。
あ、どうせだし、もっと喜ぶようなこと言ってやるか。
「幸田くん、が」
「ん?」
「取ってくれた、ら、それが、一番、いいよ」
「そ、そっか」
さすがに恥ずかしかったのか、両替してくると言い置いて離れていった。
いや、言っておいてなんだけど、オレ自身もかなり恥ずかしかった。
真人はすぐに戻ってきて、中のものを吟味し始めた。
「あれ……ぐらいか」
目星をつけておいて、百円玉を投入する。
なんだか横で見てるだけっていうのも、緊張するな。
電子音といっしょにクレーンが動き出した。
右に移動して、次に奥へ。
あ、もしかして、オレが取れそうだと思ったのと同じのを狙ってる?
いい感じにアームが止まって、キレイにブタをすくい上げた。
うお、すげ、上手い。
そのまま危なげなく出口にボトン。
「よしっ」
しゃがみこんで、取ったばかりのぬいぐるみを渡してくる。
「ほら、取れたぞ」
「ありがと、真人……くん、て呼んで、いい、かな?」
とっさに名前を呼び捨てにしてしまい、あわててフォローを入れる。
もしかして変に思われたか?
腕に抱えた小さなブタをぎゅっと抱き締める。
「あ、いや、良いよ。それじゃあ、俺も恵って呼ばせてもらうから」
ちょっと照れくさそうに、だけど嬉しそうに笑った。
こんな顔もするんだ。
チャラチャラしてるだけかと思ってたけど、案外……。
案外なんだよ!?
落ち着け、落ち着け。





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Last updated  2007.08.15 20:51:40
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下から二番目@ ふにゅ・・・(ちょっとぷれっしゃ~) To うずらさま まったりとおまちくだ…
=うずら=@ 下から二番目さん わ、ほんとですかー? 期待していいんで…
下から二番目@ (*^-^*) ふに~。 はぐ~♪ うずらさんのために…
=うずら=@ 下から二番目さん いえいえー。 来ていただけてることが分…

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