A Portrait of the Artist as a Young Man (1977) Part 1
むかし むかし、そのむかし、とても たのしい ころのこと、いっぴきの うしもうもうが、みちを やってきました。みちを やってきた、うしもうもうは、くいしんぼぼうやという、かわいい、ちっちゃな、おとこのこに、あいました…… おとうさんが、そのおはなしをしてくれた。おとうさんは、かたっぽめがねでぼくをみる。おとうさんのかおは、ひげもじゃだ。 くいしんぼぼうやというのは、ぼくのこと。うしもうもうがやってくるのは、ベティ・バーンがすんでるみち。ベティ・バーンは、レモンのあじのする、ねじりあめを、うっている。 <<おお、おのばらのはなは みどりののべに>> ぼくはこのうたを、うたう。これがぼくのうた。(「若い芸術家の肖像」ジェイムズ・ジョイス/丸谷才一訳)